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がく、さい 一場〜川上さんの話〜

[201]  あこ  2009-10-11投稿
私は苛々していた。苛々しすぎて苦手なコーヒーを一気飲みしちゃう程、苛々していた。


「にがい………。」


「砂糖、あったのに。」


「にがいよ!馬鹿。」


「ごめん……。」


私は苛々するといつも後藤にあたってしまう。こいつは幼なじみで、親同士も仲良いから、小さい頃からお互いの家を行き来していた。

私には兄弟がいないから、後藤が兄であり、弟だった。


いつからだろう。後藤のことを見下すようになったのは。


昔からナヨナヨした奴だったけど、私の人形遊びに付き合ってくれたし、それはそれで良かった。


けど、中学で後藤は私立の、所謂、進学校に行き、私は地元の公立に行き、自然と距離ができた。

後藤の頭ならもっといいとこ行けたのに、また公立高校に舞い戻って来た。

私は中学から仲良い友達が高校も一緒だから、後藤と学校で話さなくなった。

親に、後藤が中学でいじめられていたことを聞いた。


それを聞いて、私は後藤を見下すようになったのかもしれない。


「甘いの飲みたい。」


「牛乳でいい?」


「センスない。」


「ごめん……。」



いつからだろう。後藤は「ごめん」が口癖になった。いつも人の目を気にして、下を見ている。前髪も目にかかるぐらい長くて。せっかく綺麗な顔をしてるのに、勿体ない。

そう思うのはきっと私だけだろう。幼なじみのよしみというか。そんなものだ。


「何も聞かないんだ。」

私は意地悪く言った。

「……どうしたの?」

後藤は消え入りそうな声で言った。

「何でもない。」

私はなるべく感情を入れずに答えた。低く、突き放すように。私はこの人をどれだけ傷つければ気が済むんだろう。

甘い、牛乳を飲みながらそんなことを考える。

「ん…、砂糖入れた?」

「ホッとミルクには砂糖二つ。実緒のルールでしょ。」


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