間違いletter 43
俺がこうしてる間に
彼女の死は確実に近づいている
俺が離れている間に
彼女が消えてしまうのでは
そんな恐怖に襲われるようになった
「お疲れさまでしたー」
「お疲れー」
仕事を終え帰宅しようと
していた時だった
「拓也、帰んの?」
珍しく声をかけてきたのは
真治だった
「え、うん」
「じゃあ、
今日お前ん家行っていい?」
俺は真治の運転する車で
自宅に向かった
「お邪魔しまーす」
「言っとくけど汚いよ」
「わかってるよ」
真治は特に何も言わず
黙ったまま
俺の出したビールを
飲んでいた
「珍しくない?
お前がうちに来たいなんて」
「そうだな」
短く答えた彼は何かを
考えているようだった
「ゆかちゃんはどう?」
「…」
また恐怖が襲う
ゆかは今、何をしているだろう
「やっぱり深刻なのか?
お前最近元気ない」
こうしてる間にゆかは
もういなくなってるかもしれない
「…拓也」
「ああ…ごめん
うん、あんまり良くないね
このままだとゆかは…」
先の言葉がでてこない
言いたくない
聞きたくない
考えたくない
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