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コウ編

[255]  サン  2009-10-12投稿
エイとは、小学生からの幼馴染みだった。
あいつの実家は酒店を営んでいて、店の手伝いもする、しっかりした奴だった。

俺は、エイが羨ましかった。

温かい家族がいて、真っ直ぐに両親の愛を受けて育ったエイ―。

それとは反対に、俺の家は殺伐としていて、冷たかった。

親父は、議員の職務や付き合いで、なかなか帰って来ない。
そんな父に愛想をつかして、母は他に男を作っている。

誰も、本当の俺を見ようなんてしない。

欲しいのは、後継ぎに相応しい、できのいい息子だ。

でも、幸いなことに、歳が1つ離れた妹がいた。

雷華郁子(ライカイクコ)、俺は郁(イク)と呼んでいた。
郁は家庭を顧みない両親に絶望して、あまり家には寄り付かない。
たまに着替えを取りに帰ってくるくらいだ。

ミネラルウォーターを冷蔵庫の前で飲んでいると、玄関のドアが閉まる音がした。

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