間違いletter 46
その日の仕事を終えると
俺は真治と大阪に向かった
ゆかの病室に入ると
いつものベッドに
彼女の姿はなかった
「…いない」
恐怖が胸に広がる
「…ゆかっ…」
「…あ、おい拓也」
真治の声と同時に
後ろから飛び付かれた
「わっ!」
振り返るとゆかが俺に
くっついたまま顔をあげ
小さな子どもみたいに
笑っている
「…ゆか…」
俺はほっとして
彼女を抱きしめ返す
抱きしめたゆかの体の細さに
胸が痛んだ
「俺は出てくよ
拓也後でね」
真治はさっさと出ていった
ゆかが俺の服の端を引っ張る
腕を離すと不思議そうに
俺を見つめるゆかがいた
「あ…ごめん
検査だったの?」
ゆかは微笑みうなずく
こないだ会ったときとは
全く違い明るいゆかに
ほっとする
「何かいいことあった?」
『たくやがきて
うれしいから』
いつものように俺の手の平に
一文字ずつ書き
また笑顔を見せる
「まったく…」
彼女に触れようと
手をのばしたが
彼女は咳き込みよろめいた
「ゆかっ…」
病気は確実に
彼女の体力を奪っていた
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