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女心と秋の空

[697]  阿部和義  2009-10-16投稿
 世間知らずで変わり者ではあるけれど、天才的な頭脳を持つ化学者がいます。

 ある日、馴染みの新聞記者がやってきて、愚痴をこぼしました。

「もう僕、女性なんて信用できません!」

「いきなりどうしたんだね?」

「昨日、彼女と食事の約束をしたのにドタキャンされた上、別の男と歩いているのを見てしまったんです!
 酷いと思いませんか!?」

「女心と秋の空か……。もう秋だね」

「季節を感じてる場合じゃないですよ!
 こうなったら僕も浮気してやる!」

「ふむ……そうだ、これを試してみるといい」

「何です? この変な色の薬は?」

「ちょっと耳を貸しなさい。これは染色体のゴニョゴニョ……」

「えっ――! 女になれる薬!?」

「そうだ、この間マウスで成功したのだよ。
 ちょうど若い男性の実験体を探していたのだが」

「何だか急に悪寒が……」

「まあまあ、女性心理を知るのも重要だよ。
 実は、私自身も試してみたから大丈夫だ」


 そして数日後。

「もうあたし、男性なんて信用できません!」

「今度はどうしたんだね?」

「だって彼、女の方が良いって言うんですもの!」

「……君、もう私に近づかないでくれないか」

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