溺れる魚 3
「お母さん、荷物これ?」
新は近づいてきて、荷物を手に持った。
「新、こちら岸真理さん。お母さんの友達。あんたも赤ちゃんの頃遊んでもらったんだよ」
新は私の方に視線をずらした。
「こんにちは。覚えてないと思うけど…大きくなったね!」
「…すいません。覚えてないです」
苦笑いして新が言う。
「当然だよ。でも私、新君のオムツも変えたことあるんだから」
「マジっすか…」
その後、郁恵と連絡先を交換して別れた。
新と会うのは、これきりだと思っていた。
それから数日後。
あの日は雨が降っていた。
仕事帰りに公園のベンチで座っている子を見つけた。
「新くん?」
新だった。
ずぶ濡れで、いつから座っていたんだろう…。
「新くんだよね?私、覚えてる?お母さんの友達の岸。こんなところにいたら風邪ひくよ…」
「……」
「もう遅いし…お母さん心配するよ」
「……」
新は黙ったまま俯いていた。
「新くん、風邪ひく…」しゃがみこんで、新の顔を覗いたら、一瞬雨かと思ったけど、新は泣いていた。
「…とりあえず、うちすぐそこだから…行こう」
私は新の手を引いて、家に連れていった。
続く
感想
- 27898: 静かにワクワク物語は進行!シャイン [2011-01-16]