溺れる魚 5
ピンポーン♪
そこには新が立っていた。
あの雨の日から3日が経っていた。
「この間はありがとうございました。お借りした服を返しにきました」
「元気になったみたいだね。よかった」
新は愛想笑いして軽く頭を下げた。
「お茶でも飲む?」
「あ、はい。じゃあ」
暖かいレモンティを一緒に飲む。
「おいしいです」
「よかった」
「…この間の、ポタージュも、おいしかったです」
「そう。よかった」
私は笑顔で応える。
部屋にはレモンティの香りが広がり、いい匂いが漂っている。
「…あの日、俺、失恋しちゃって…」
新が俯きながら話し出した。
「…そうなの」
「男なのにあんなになって、カッコ悪いっすよね」
泣いてたこと、言ってるのかな?
「全然そんなことないよ。むしろそんなに相手のこと好きになれるなんて素敵なことだよ。なかなかそんな相手と巡り会えないよ」
「そすかね…」
「私なんてここ最近泣いてないよ。前の彼が浮気した時も涙も出なかったし。そんなに好きじゃなかったのかもね」
「そうなんすか…でも浮気なんて…。ヒドいすね」
「もっとヒドい男もいたよ」
その後私の付き合った男性経歴の話をした。
新は私の一語一句に驚いたり、同情したり、笑ったり、していた。
続く
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