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神のパシリ 8

[420]  ディナー  2009-10-19投稿
神の一翼。偉そうな通り名を名乗ったところで、貴様とて雑用係だろうに。

だが、それを言葉に出したところで意味などありはしない。

ゼルは大鎌を担ぎあげ、直立不動にてレミエルに対峙した。

翼を持つ者は音もなく地を蹴り、ゼルへ肉薄する。
繰り出された槍を首をかしげてかわし、大鎌を白い首元目掛け振り下ろす。
それはのけ反ってかわされ、今度は槍が横薙ぎに振られた。
ゼルはその横薙ぎに合わせ側転、大鎌で地面を突き空中へ跳躍した。それをレミエルが翼をはばたかせ追う。

空中で何度も大鎌で槍と切り結び、地面にぶつかる直前に大鎌を地面に直角にぶつけ、反動で再跳躍、薙ぎ払うもののかわされ、

ゼルは地面に着地、砂煙があがる。

同時に、突風のごとき空圧。

瞬く間の事だ。

レミエルは翼をはばたかせ、空中に居座っている。

「…ゼル、首尾はどうじゃ?」

状況を知らないのか、死の神からの通信。

ゼルはレミエルに向き直りながら、

「今、小間使いに阻まれております」

「ほぅ、それは難儀じゃの。して、いでたちは?」

空中より襲い掛かる槍を大鎌で払いながら返答する。

「神の一翼レミエル。白い女です」

耳飾りの向こう側で状況を面白がる少女の声。

「名前からして、光の神の使いか。厄介な輩に見つかったのう。どうじゃ、できる奴か?」

「はい」

「ゼルがやられてしまうのはわらわとしても面白うないのう。どれ、一肌脱いでやろう。…陣を描け」

「…御意」

ゼルは両手で大鎌を振り回して切り合いながら、足先で地面に陣を描き出す。

「…ゼルよ、一瞬で仕留めよ」

死の神の、声の温度が一気に冷え込んだ。

次の瞬間。

おおおおおおおおおおおあああああああああああ

耳障りな亡者どもの声とともに、無数の手が陣より溢れ出し、白い女を凌辱するかのように、

四肢を、身体を、首を、全身を掴む。

「…貴様ッ!」

辱めを受け、レミエルの顔が紅潮する。

「…卑怯と思うか?愚考だな」

大上段に掲げられる大鎌。

だが、それは翼を断つ事はなかった。

「…フェルゼル兄?フェルゼル兄なの?」

ゼルの背後からの声に、魂がどくんと脈打った。

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