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神のパシリ 13

[387]  ディナー  2009-10-25投稿
「…主よ、何か知っているようで。そして…隠しているようで…」

ゼルの口元が怪訝に歪んだが、死の神はまるで気にする様子もない。

「そなたが知ったところで、どうなるものでもないわ」

「では、教えて頂けるので?」

「必要ない」

死の神は少し欝陶しい感じで返す。

「…して、今はいずこにおる?」

「…わかりません。雨音がします。俺に関与した女から聞きましょう」

「…よかろ。ゼル、詮索はそなたのためにはならんぞ。そなたはわらわの命を果たせばよい」

「…検討しておきます」

まるで先程とは違う、小間使いとしての粗末な扱いだ。

「よいか、ロロでわらわが下知を果たせ」

ぶっきらぼうに、通信は終わった。

嘆息するゼルに、背後から声がかかる。

「…気付いたんだ…よかった…」

振り返ると、寝ぼけ眼の少女が、毛布を払いベッドに腰かけている。

「聞きたい事がある」

「…?」

「ここはどこだ」

「雨の街、ロロだよ」

奇遇なのか、運命なのか。ゼルは期せずしてロロにたどり着いていたのだ。

なるほど、雨の音にも、カビ臭さにも納得がいく。
「それより、身体は大丈夫なの?」

「問題ない。俺は普通の人間とは違う」

少女は、穴が開いたゼルの衣服から見える完治した体に、驚きを見せる。

「すごい…。心配したよフェルゼル兄…あれじゃ死んだっておかし…」

「待て。俺はフェルゼルという名前ではない」

「…えっ?」

「俺はゼル。追われながら旅をしている、現世の隠者だ」

それが、ゼルの人間世界での存在口実なのだ。

「…でも…その顔…それにその…」

少女は恥じらいを持った表情で、ゼルの瞳をのぞき見る。

「その赤いキレイな瞳…フェルゼル兄以外で見た事ないよ…」

「…違うと言っている。第一、俺はお前を知らない」

少女の表情は、軽い落胆に変わった。

「…みたいだね。私のコト、本当に知らない感じだもん…」

少女はいじらしい表情で、濡れた視線をゼルへ向けている。

「…聞いて欲しそうだな、フェルゼルが誰なのか」

少女は、呟くように言った。

「私の……血の繋がらない兄さんだよ」

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