溺れる魚 9
あれからまた一週間が過ぎようとしていた。
これでいいんだ。
このまま何の関係もなくなる。
新にとっても、それが一番いい。
新が年を重ねて大人になった時、ああ昔、酔っぱらいのおばさんにキスされた事あったなぁ。
その人に優しくされて、好きだとか勘違いしたことあったなぁ。
とか、新にとってそんな思い出になる。
そんな事を考えて夜を過ごした。
正直、高校生といえど大人びた新の告白には動揺してしまった。
でも私からしたら、やっぱり子供だ。恋愛感情なんか抱けない。
私が新を恋愛対象として見るなんて…そんなのどう考えてもありえない。
このときはそう思っていた。
いや、そう思おうとしていたのかもしれない。
私を真っ直ぐに見る新の顔を思い出す度、胸が苦しくなった。
翌日、仕事の帰り道にあの公園を覗いた。
新と会うつもりなんてない… ないけど… でも…
今思えば、新に会えることを期待していたんだと思う。
視線の先に見えたのは、ベンチに座る新。
それともう一人、可愛らしい女の子が新の隣に座っていた。
続く
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