神のパシリ 14
「血のつながらない…私の兄さん…」
少女は、記憶を反芻し、小麦色の顔を紅潮させた。
「…そうか」
「…私には、優しくて憧れだったんだ…。フェルゼル兄は、悪い事をいっぱいした。でも、私には優しくて…私、それだけで嬉しかった…
元々、私は両親の顔すら知らないの。フェルゼル兄だけが、この腐った街で私を見つけてくれた。それだけで嬉しかったの。
フェルゼル兄はロロのアサシンだった。
盗み…殺し…
ロロのアサシンのギルドリーダーになっても、私だけは捨てずにいてくれた…」
少女は、力なくゼルに微笑んだ。瞳が、わずかに潤んでいる。
「…でも、報いだね…。死んじゃった…。
私の知らない所で、知らないうちに。私は、ただそれを知らされただけで…
信じられないし、信じたくなかった。…だから」
「…そうか、わかった」
ゼルは哀れみともとれぬ瞳で少女を捉えながら、煙草に火をつける。
「…お前、名前は」
「…レミーシュ。よろしく、ゼルさん」
無理のある笑みを浮かべる少女、レミーシュは、ベッドにハリのある脚を投げ出し座り直した。
「…で、さっきはどうしてあんな目に?」
「言っただろう、追われていると」
「あ、そっか…でも、さっきの、人じゃ…ないよね…」
「…だったら?」
「…あの人、羽があった。神の…使いなのかな」
「…だったら?救いを求めるか?使いを見つけて訴え、救われた街もあるというぞ?」
ゼルの意地悪な質問に、レミーシュは豊かな胸をはった。
「まさか。ロロで信じられるのは力だけ。誰も、他人や神を信じたりしないよ。
ここは汚い街。人のいろんな悪い所の掃きだめだよ。生きるためには、必要なのは自分の力だけ。
信頼なんてない。あるとしたら、損得勘定だけだから」
自信を持って言い放つレミーシュ。
本来、人間なんてこんなあさはかなものだ。
だが、ゼルは死の神の小間使いでありながらも、そのあさはかさに少し哀しくなった。
つくづく思う。
全能と言われる神が創りだした命でありながら、このていたらくか。
「…そうか」
嘆息するゼルの視線の彼方、錆び付いた扉が、ぎしぎしと音を立てて開いた。
人影が、二人しかいない部屋に落ちた。
少女は、記憶を反芻し、小麦色の顔を紅潮させた。
「…そうか」
「…私には、優しくて憧れだったんだ…。フェルゼル兄は、悪い事をいっぱいした。でも、私には優しくて…私、それだけで嬉しかった…
元々、私は両親の顔すら知らないの。フェルゼル兄だけが、この腐った街で私を見つけてくれた。それだけで嬉しかったの。
フェルゼル兄はロロのアサシンだった。
盗み…殺し…
ロロのアサシンのギルドリーダーになっても、私だけは捨てずにいてくれた…」
少女は、力なくゼルに微笑んだ。瞳が、わずかに潤んでいる。
「…でも、報いだね…。死んじゃった…。
私の知らない所で、知らないうちに。私は、ただそれを知らされただけで…
信じられないし、信じたくなかった。…だから」
「…そうか、わかった」
ゼルは哀れみともとれぬ瞳で少女を捉えながら、煙草に火をつける。
「…お前、名前は」
「…レミーシュ。よろしく、ゼルさん」
無理のある笑みを浮かべる少女、レミーシュは、ベッドにハリのある脚を投げ出し座り直した。
「…で、さっきはどうしてあんな目に?」
「言っただろう、追われていると」
「あ、そっか…でも、さっきの、人じゃ…ないよね…」
「…だったら?」
「…あの人、羽があった。神の…使いなのかな」
「…だったら?救いを求めるか?使いを見つけて訴え、救われた街もあるというぞ?」
ゼルの意地悪な質問に、レミーシュは豊かな胸をはった。
「まさか。ロロで信じられるのは力だけ。誰も、他人や神を信じたりしないよ。
ここは汚い街。人のいろんな悪い所の掃きだめだよ。生きるためには、必要なのは自分の力だけ。
信頼なんてない。あるとしたら、損得勘定だけだから」
自信を持って言い放つレミーシュ。
本来、人間なんてこんなあさはかなものだ。
だが、ゼルは死の神の小間使いでありながらも、そのあさはかさに少し哀しくなった。
つくづく思う。
全能と言われる神が創りだした命でありながら、このていたらくか。
「…そうか」
嘆息するゼルの視線の彼方、錆び付いた扉が、ぎしぎしと音を立てて開いた。
人影が、二人しかいない部屋に落ちた。
感想
感想はありません。
「 ディナー 」の携帯小説
- あの人への追悼 〜1〜
- あの人への追悼 〜1〜
- あの人への追悼〜始めに〜
- ……クライアナノナカ……………九人目…………
- 『クライアナノナカの真相』ノシンソウノシンソウノシンソウノシンソウノシンソウノシンソウ14
- 『クライアナノナカ』の真相 〜13〜 かつ、八人目
- 『クライアナノナカ』 の真相 〜12〜