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知ってるよ。?

[337]  やまだ  2006-08-07投稿
知ってるよ。

あなたがあのひとに伝えたい想いを堪えていること。


でも、あなた知らないでしょ。
あたしも、あなたに伝えたい想いを堪えていること。


――…?…――

廊下でのりちゃんに昨日のことを話すと、あたしが泣いて怒れなかった代わりに、怒ってくれた。


『え?!』
『ち、違うの。泉先輩には悪気とかなくて!』


怒ったのりちゃんに昨日のことを説明するのは大変だった。


のりちゃんは、頑張って渡したんだから、気持ちはちゃんと伝わったよ。と言って、ギュッと抱き締めてくれた。

あたしはまた泣きそうになったけど、堪えて笑ってみせた。


教室に戻ると、ゆうたがあたしの机の上に座っていた。


教室にはまだ誰もいない。
朝練のある鈴木くんにあわせて行くせいか、皆より早く学校についてしまう。


『おはよう。』
『おはよ。』


昨日ゆうたが隣にいてくれたから、あたしはずっと泣いていられた。


『…ゆうた、昨日は…』


近付いて、ありがと。と言おうとした瞬間、ゆうたはあたしの腕をぐいっと引っ張って、腕の中に閉じ込めた。

『ちょ、ちょっ…とゆうた!』

突然の出来事に、あたしは上手く抵抗出来ないまま
ゆうたの胸におさまってしまった。


『…昨日泣いたんだろ。』
『はっ?てゆか離してっ…』
『眼、腫れてる。』
『うっさい!』


ゆうたは笑いながら抱き締める力を強くした。


『やッ…誰か来ちゃうってば!』
『カップケーキ。』


…いきなりなによ。
やなこと思い出させやがって。

『…俺のために作ったんじゃなくても、美味かった。』
『……昨日はまずいって言ったくせに。』
『言ったっけ?』
『ふざけんなッ!』


空いてる片手でほっぺたをつねったら、ゆうたは泣きながら腕を離して

『なんだよ元気じゃんか!』

と笑った。



元気なんかじゃなかった。


…ゆうたが元気にしてくれたんだよ。


『…いきなり抱き締めるから何かと思ったじゃん!』
『いや…哀れな捨て犬っぽくてさ。』
『殴るよ。』



ゆうた。


ありがとう。


言いたいけど、言えなかった。
涙が溢れそうだったから。

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