溺れる魚 12
夢の中で私の名前を呼んだの?
私が夢に出てきてたの?
そんなこと、関係ない。気にしない。
私と新はただ友達の子供、母親の友達、それだけ。
そう。それだけだ。
それから3日後。
帰り道の公園に新がいた。
今日は新ひとりだ。
声をかけないのも変だし…
「新くん。…風邪、よくなったんだね」
「…お陰様で。もうすっかりよくなりました」
会話が、続かない。
それは、きっと私が新を意識しているから…。
ダメだ。もう本当に、新に会うのはやめよう。
帰り道も、違う道から帰ろう。
今までだって、そうできたはずだったのに、しなかった。
私は馬鹿だ。
「…じゃあ」
「…はい」
私はその場を立ち去ろうとした。
その時。
新が後ろから私を抱きしめた。
「やっぱり…俺…好きです…」
新は震える両手で私を強く抱きしめている。
「岸さんが言うように、俺が弱ってるときに優しくされたからかもしれない…。でも理由なんて、どうだっていい…今、俺は、岸さんが好きなんです…」
やっぱり、会わなければよかった。
「振るなら、振るで…ちゃんと、真剣に答え下さい…」
私は本当に大馬鹿野郎だ。
気づくと、私も思いきり新を抱きしめていた。
続く
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