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ほんの小さな私事(129)

[356]  稲村コウ  2009-10-30投稿
なつきさんに言われた通り、私たちはベッドのカーテン裏に隠れた。
よくよく考えてみると、こんなところに隠れる必要性は無い気もしたが、なつきさんに何か考えがあるのだろうと納得しておいた。
ただ、この人数が隠れるには狭すぎるので、ベッドの上に山下さんと私が。その他のみんなは、カーテンの外側の、扉から見えない位置に立つことにした。
それを確認したなつきさんが、扉の鍵を外して開く。私たちは音を頼りに、その様子に固唾を飲んだ。
「これはこれは、いったいどうしたん…。」
そこまで言いかけて、なつきさんは言葉を詰まらせた。
なにがあったのだろうか?皆に緊張が走る。
「…教頭…。まさかあなたが来てるとは思いませんでしたよ。はあ…声帯変えて呼び掛けてくるとか、人が悪い。」
「何をいっているんですか。私たちは常日頃、周囲に気を配って行動するものですよ。あなたのような方は尚更、行動に気を付けないといけませんのに…。」
どうやらやってきていたのは瀧口先生では無いようだ。
なつきさんが言っていた事から察すると、今来ている誰かが、瀧口先生の声を真似たとか、そういった感じなのだろうか?
それにしては、元に戻ったらしい声は、瀧口先生の声とはかけ離れた、高い音をしている。
「話しは山神様から大体聞きました。生徒たちが大変な事に巻き込まれたとか…。その子たちは何処に?」
「私の所で保護しています。…ああ、悪かった。みんな出ておいで。」
そう言われ、私たちは各々、カーテンを開いて外に出ていった。
そして、なつきさんと対話している人物を見る。
そこには、初老の女性が、スーツに身をつつんで、背筋をピシッとさせて立っているのが見えた。
どうやらこの方が、この学校の教頭先生らしい。
その女性はこちらを見て、にこりと笑いながらお辞儀きしてきたので、私もそれに対して、お辞儀をしてかえしてみせた。

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