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神のパシリ 18

[407]  ディナー  2009-10-30投稿
メッツェはすぐに戻ってきた。
リーダーはゼルにとても興味を示し、レミーシュに連れて来させるよう指示したそうだ。

「私は引退した身だ。首を突っ込まれすぎるのは面白くないのだろう」

メッツェはそう鼻で笑っていた。

「ゼル、気をつけろ。外は人の暗黒が渦巻いている。それに今のリーダーは…お前のように浮世離れした奴だ」

そのリーダーが約束した、刻限が迫ってきていた。

ロロに咲く、一輪の傘の花。

レミーシュの咲かせたその中にゼルはいた。

雨が、一面に降りしきっている。

この街で行われている、汚い血生臭い行為を、生臭い雨で流そうというのか。

それが神の仕業なら、とんだ皮肉か自虐の洒落だ。

自らが創った命だろうに。

生臭い、生暖かい雨は、人の憎悪や汚れ、傲慢さを流すつもりか、強さを増している。

しかし、その雨音がまた、人が死ぬ音を消している。

雨音の中を憎しみや妬みが駆けずり回り、命が潰れるのが分かる。

この雨が神の仕業なら、神は現実逃避したいのだろう。

自らが創った命の愚かさを雨で隠し、そしてゼルの主である死の神に全て押し付けるのだ。

ゼルは少し苛立ったが、彼に無謀にも黒い刃を向ける、神の愚作どもを返り討ちにする事で、少しは気が晴れた。

人の作った愚かな価値、金が欲しいのか。

それとも、単に命を奪う支配感に狂ったか。

雨で溢れる街を歩く神のパシリと少女に、襲い掛かる欲望の群れ。

びしゃびしゃ降る地面に、それらを叩きつける。

この手合いに、一日に幾つの傘の花が散るのだろう。

それでも死は平等で、死んでしまえば平等で。

善人でも悪人でも、
男も女も老いも若きも、

死の福音は平等なのだ。

だからゼルは殺さない。

その規律を傾けぬため。

人に、もっと明確に、もっと死の尊さを刻ませるため。

一分、一秒長く生きる事こそが、死の尊さを刻み込むのだ。

同時に、生への執着を刻み込む事になっても。

どこかで、ゼルは人を信じているのかも知れない。

斜に構え、人を血の詰まった袋、魂の器としてしか考えていなかったとしても。



そして二人は、ギルドへたどり着いた。

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