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溺れる魚 16

[335]  ゆう  2009-10-31投稿

私と新はホラーでも何でもない、ドキュメンタリー映画を選び、席に着いた。


劇場内が暗くなり、映画が始まる。


真っ暗に、なった。


新の手に、自分の手を重ねる。


胸の鼓動が速くなる。



新がそっと私に顔を近づけてきた。


「…真理さん……キス、していい?」

私の耳元で、新が小声で言った。


「こんなところで?」

私も小声で返事する。



新は黙ってしまった。


「嘘。さっきのお返し」
私は小さく笑って、新の頬をなでる。


劇場内は暗く、映像が映し出されているスクリーンの明かりで、新の顔はうっすらと見える程度だ。


「…真理さんに、キス、したくなった…」

新の吐く息を、耳元に感じる。



「新、新は私に何してもいいの…」





新はゆっくりと唇を重ねてきた。


軽く、壊れものでも扱うような、優しい、キス。

それだけで、頭がクラクラする程の幸福感が私を襲った。


その後もキス、キス、キス…


私と新は、映画が終わるまで…ずっとキスし続けた。



続く

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