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ロストクロニクル8―11

[381]  五十嵐時  2009-11-01投稿
パールの言葉にタクトは少々の落ち着きを取り戻した。
そして、辺りの様子を伺った。
タクト達が寄港した港はこの小さな島エンシェントロックの東側に位置している。島はきれいな円形で、中央には、最東端でもあるこの港からでもはっきりと確認できる、真っ赤な城が不気味に聳え立っている。
今からタクト達が向かう『慰めの牢獄』はそんな港の少し進んだ西の林の中ににある。
「まずはフラットを助ける。そのあとすぐに『木彫りの不死鳥』だ」
タクトは真っ赤な城を見つめながら、自分に言い聞かせた。

しばらく何事もなく、林の中をシルヴァがイエルと横並びにタクト達の前を歩いていた。タクト達は、自分達の入れられていた袋を各々持っている。
「どうしてこんな島にルパス兵がいるの?」
先ほど顔に付いてしまった蜘蛛の糸を手で払いながらパールが聞いた。
「この島にはとてつもない宝があるらしい。何せ、時が止まった島だからな」
遠くを見るようにシルヴァが答えた。
「時が止まった?どういう意味だ」
ウェドの問いにシルヴァは驚いた顔を見せた。
「ん?知らないのか?この島は・・・」
シルヴァの頬を弓矢がかすめた。
「敵だ!」
シルヴァの叫びと共に、五人は別々の木の後ろに隠れる。
「敵の人数が分からない。気をつけろ!」
シルヴァの張り詰めた声がすぐ右の木から聞こえてくる。
・・・そして、誰も動かない厭な停戦状態に入った。
「さて、どうする?タクト」
ウェドの笑いを含んだ声が左から聞こえる。
「こっちから動くのは危険だ。様子を見て・・・」
と言いながら木の後ろから少しだけ顔を出した。その瞬間
シュッ!という音と共に弓矢がタクトの右の頬を傷つけた。
「バカ!何やってる!」
「ごめん。様子を見ようと思って」
頬の血を左手の甲で拭い取る。
息つく間もなく、ザワザワと騒がしい音がし、林の向こうからルパス兵が現れた。
「六人か」
二人のルパス兵が一緒に弓矢を放ってきた。
「まずいな」
「弓兵はわたしに任せて!あとの四人はよろしくね」
パールは木の後ろから飛び出し、走っている状態のまま弓を構え、矢を放った。
矢は命中した。そのまま別の木の後ろに隠れる。隠れた後にもう一人の弓兵の矢が飛んできた。
「遅いのよ!」
木の後ろから飛び出し、もう一人を射抜いた。

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