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キャッチボール 第59話〜最後の手紙〜

[370]  るー6  2009-11-04投稿
「だって、僕を守ろうとしているケンカが多いじゃん。正義のヒーローみたいだったよ。」
「ヒーローって…お前…ヒーローって…」
「バーカ。調子に乗るな。」
「…だな。」
2人の間に暖かな風が吹き抜ける。
「あとさ…これ…プレゼント。」
「えっ…あけていい?」
「なぜか、お父さんからの手紙も入ってるんだけど…。まぁ後で読んで。」
「あ…。あぁ。」
まだ幼い手でプレゼントを開ける。
すると、
「バ…バット?」
「それ欲しそうだったから…」
「…ありがとう。」
「まぁ、それで高校でも野球、頑張れよ〜。」
「うっしゃあ!」

でも、この嬉しい一時も、「岬。そろそろあっち行くぞ。」
僕は、ずっと足元に置いていた重い荷物を抱えて、
「じゃあ、そろそろだって。」
「あ…そう…。」
急に悲しそうな顔になった龍吾。
「…今まで、僕を支えてくれて、ありがとう。」
「今度、お前の家、行くから。」
「うん…待ってる。」
本当は、行けないのに…。
僕は車に乗った。
車はゆっくりと走っていく。
「みーくーん!また、キャッチボールしよう!オレ、待ってるー!」
「もちろん!」
「みーくんは、オレの大切な親友だ!」
「ありがとう!こっちもだよ!」
車は、どんどん速くなる。龍吾も、追いつけなくなった。
だんだんと、龍吾の姿が小さくなる。
「本当に!ありがとう!」車の中では、泣き崩れる僕がいた。
これで、本当に会えない。あの真実を知ってしまった以上、さらに会えないと思う。
龍吾は、本当に大切な親友だった。
ありがとうの気持ちしかない。この事を大切にして、これからを生きる。
「僕…頑張るよ。」
そう言って僕は、次へと歩み始めた。
龍吾とは、別の道を。

もう車は行ってしまった。龍吾はバットを握りしめ、その場にしゃがみこむ。
「もう…会えないのか…」昨日、一晩かけて姉ちゃんと相談した結果、オレは名古屋に行くことに決めた。でも、本当はこの街にいたいが。
龍吾は手紙をとり、封を開けた。
読んでみると、
『拝啓 龍吾くん
今回は岬の進路の関係で、この友情を引き裂くことをしてしまって、
大変申し訳なく思っております。
また、龍吾くんに父親としての教育を年上ながらに注意された事は、今後も反省していきます。
岬の精神状態も、龍吾くんと出会ってから少しずつ回復してきました。大変感謝しております。

続く

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