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神のパシリ 22

[390]  ディナー  2009-11-05投稿
「ちょっと君の事、分かってきたよ」

キアは今度はワインを取り、グラスに注ぐ事なく瓶から喉に流し込む。

「ドキドキするなぁ。久しぶりだ」

「口数の多い奴だ」

それが開幕の合図となる。

ゼルが地面を蹴り、キアへ疾走、間髪いれず大鎌を振り下ろす。
キアは蒼いナイフでそれを受け流し、鎌は地面を突き刺した。
華麗に一回転し、バックナックルよろしく、ナイフが喉元へ突き出され、
ゼルも華麗に一回転しながらしゃがみ込み、突き刺さった鎌を抜きながらにして、峯をキアの側頭部めがけ振り上げる。
キアはそれを足で押さえ付けるが、勢いは止まらず、体は斜めに空を飛ぶ。
大鎌をその勢いで振り回し、遠心力を持って再び左から袈裟斬りに。
空中でキアはナイフで流すが、同時に躯も流れ、
そこにゼルの回し蹴りが脇腹に入って、

…キアは女従者を一人巻き込んで吹き飛んだ。



「…口ほどでもないな」

そう言うゼルの、首筋に赤い糸が走る。

「…っ痛てて…。ホント、容赦ないなあ。普通の人間なら最初の一刺しで終わりだよ…?」

むくりと起きてキア。女従者に手を貸して起こし、
「危ないからもう下がっていいよ」

と退出を促している。

「いやぁしかし、レミーシュは初めていい仕事をしたね。
メッツェ翁に内緒で再雇用してあげた甲斐があったよ。
彼女、殺しはまるでダメだから、囮くらいにしかならないけど…今回は感謝したいね」

キアはにやけながらナイフを構え直す。

「もう少し、君を知りたいから…

………………いくよ」

キアのナイフが、地面を走り回る。不規則に…

…否。

「…これは…!」

キアのナイフが、何かを描く。


   魔法陣だ!


字体は死の神のものではない。しかし、形はまさしくゼルも描くものと同じだ。

「貴様、一体…!」

「無駄口の余裕はないよ…?」

描き終わり、間髪入れずに陣は発光する。

ゼルの真下が、陽炎のようにゆらめいたかと思うと、無数の冷たい光を帯びた鎖が射出、ゼルの四肢を搦め捕る。

「…ちっ…!」

「言わんこっちゃない。…形勢逆転だね」

キアは、不敵に微笑みを口元にはりつかせた。

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