ベースボール・ラプソディ No.2
それほどの大男に見据えられる哲哉だったが、臆することなく笑顔で用件を伝えた。
「野球部への勧誘に来ました」
野球という言葉を耳にした途端、大澤は険しい表情で開口した。
「失せろ、野球など、……二度とする気はない」
強く言い切る大澤。すると横で聞いていた八雲が、不思議そうな顔をして口を挟んできた。
「あれ、大澤さんって野球嫌いなんですか?」
今度は大澤が不思議そうに八雲を見た。中学時代に名捕手として名を馳せた哲哉の事は知っていたが、この少年には全く見覚えがなかったからだ。
「……誰だ、お前?」
初対面であることを思いだした八雲は、頭を掻きながら照れ臭そうに自己紹介を始めたた。
「初めまして、野球部でピッチャーやらせてもらってます、一年の真壁八雲です」
大澤の鋭い眼光が八雲を射抜くが、緊張感のかけらも感じられないこの少年に、興味も瞬時に失せたようで、すぐにそっぽを向けた。
「……俺に関わるな」
そう言い残して、大澤は帰路についた。
「少しは時間が解決してくれてると、思ったんだがなぁ」
大澤の背中を見つめる哲哉がそうぼやくと、八雲が直ぐさま問い掛けてきた。
「その口ぶりからすると、大澤さんが野球を嫌う理由を知っているようだな」
教えろと言わんばかりの八雲に、哲哉は話すことを躊躇していたようだが、彼が珍しく真顔なのに気付き、重々しく語り始めた。
「……二年以上前の話だが、当時天才スラッガーとしてマークされていた大澤さんは、チームであの人だけが突出していたために、全打席敬遠される試合が当たり前になっていたんだ。
それでも大澤さんは何一つ不満をいわず、バッターボックスに立ち続けていた。けどある試合で、相手チームの一塁手が味方打線を馬鹿にしたことに激怒して、殴り掛かってしまったんだ。
事態は廃部にまで言及されたが、大澤さんを擁護する者はチームメイトにすらいなくて、結局大澤さんは一人部を去ることで全てを解決させたんだ」
哲哉が悲しげに言葉を綴り終えると、聴き入っていた八雲は憐憫の情を込めて言葉を発した。
「あの人にも辛い過去があるんだな」
「どうする、大澤さんは諦めるか?」
「い〜や、駄目だ。あの人が俺達の野球部必要な戦力だといったのはてっつぁんだろ。それに、何よりもあの人自身が野球を必要としている」
「野球部への勧誘に来ました」
野球という言葉を耳にした途端、大澤は険しい表情で開口した。
「失せろ、野球など、……二度とする気はない」
強く言い切る大澤。すると横で聞いていた八雲が、不思議そうな顔をして口を挟んできた。
「あれ、大澤さんって野球嫌いなんですか?」
今度は大澤が不思議そうに八雲を見た。中学時代に名捕手として名を馳せた哲哉の事は知っていたが、この少年には全く見覚えがなかったからだ。
「……誰だ、お前?」
初対面であることを思いだした八雲は、頭を掻きながら照れ臭そうに自己紹介を始めたた。
「初めまして、野球部でピッチャーやらせてもらってます、一年の真壁八雲です」
大澤の鋭い眼光が八雲を射抜くが、緊張感のかけらも感じられないこの少年に、興味も瞬時に失せたようで、すぐにそっぽを向けた。
「……俺に関わるな」
そう言い残して、大澤は帰路についた。
「少しは時間が解決してくれてると、思ったんだがなぁ」
大澤の背中を見つめる哲哉がそうぼやくと、八雲が直ぐさま問い掛けてきた。
「その口ぶりからすると、大澤さんが野球を嫌う理由を知っているようだな」
教えろと言わんばかりの八雲に、哲哉は話すことを躊躇していたようだが、彼が珍しく真顔なのに気付き、重々しく語り始めた。
「……二年以上前の話だが、当時天才スラッガーとしてマークされていた大澤さんは、チームであの人だけが突出していたために、全打席敬遠される試合が当たり前になっていたんだ。
それでも大澤さんは何一つ不満をいわず、バッターボックスに立ち続けていた。けどある試合で、相手チームの一塁手が味方打線を馬鹿にしたことに激怒して、殴り掛かってしまったんだ。
事態は廃部にまで言及されたが、大澤さんを擁護する者はチームメイトにすらいなくて、結局大澤さんは一人部を去ることで全てを解決させたんだ」
哲哉が悲しげに言葉を綴り終えると、聴き入っていた八雲は憐憫の情を込めて言葉を発した。
「あの人にも辛い過去があるんだな」
「どうする、大澤さんは諦めるか?」
「い〜や、駄目だ。あの人が俺達の野球部必要な戦力だといったのはてっつぁんだろ。それに、何よりもあの人自身が野球を必要としている」
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