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ベースボール・ラプソディ No.2

[700]  水無月密  2009-11-08投稿
 それほどの大男に見据えられる哲哉だったが、臆することなく笑顔で用件を伝えた。
「野球部への勧誘に来ました」
 野球という言葉を耳にした途端、大澤は険しい表情で開口した。
「失せろ、野球など、……二度とする気はない」
 強く言い切る大澤。すると横で聞いていた八雲が、不思議そうな顔をして口を挟んできた。
「あれ、大澤さんって野球嫌いなんですか?」
 今度は大澤が不思議そうに八雲を見た。中学時代に名捕手として名を馳せた哲哉の事は知っていたが、この少年には全く見覚えがなかったからだ。
「……誰だ、お前?」
 初対面であることを思いだした八雲は、頭を掻きながら照れ臭そうに自己紹介を始めたた。
「初めまして、野球部でピッチャーやらせてもらってます、一年の真壁八雲です」
 大澤の鋭い眼光が八雲を射抜くが、緊張感のかけらも感じられないこの少年に、興味も瞬時に失せたようで、すぐにそっぽを向けた。
「……俺に関わるな」
 そう言い残して、大澤は帰路についた。

「少しは時間が解決しているかと思ったんだがなぁ」
 大澤の背中を見つめる哲哉がそうぼやくと、八雲が直ぐさま問い掛けてきた。
「その口ぶりからすると、大澤さんが野球を嫌う理由を知っているようだな」
 教えろと言わんばかりの八雲に、哲哉は話すことを躊躇していたようだが、彼が珍しく真顔なのに気付き、重々しく語り始めた。

「……二年以上前の話だが、当時天才スラッガーとしてマークされていた大澤さんは、チームであの人だけが突出していたために、全打席敬遠される試合が珍しくなくなっていたんだ。
 それでも大澤さんは何一つ不満をいわず、バッターボックスに立ち続けていた。けどある試合で、相手チームの一塁手が味方打線を馬鹿にしたことに激怒して、殴り掛かってしまったんだ。
 事態は廃部にまで言及されたが、大澤さんを擁護する者はチームメイトにすらいなくて、結局大澤さんは一人部を去ることで全てを解決させたんだ」
 哲哉が悲しげに言葉を綴り終えると、聴き入っていた八雲は憐憫の情を込めて言葉を発した。
「あの人にも辛い過去があるんだな」
「どうする、大澤さんは諦めるか?」
「い〜や、駄目だ。あの人が俺達の野球部に必要な戦力だといったのはてっつぁんだろ。それに、何よりもあの人自身が野球を必要としている」

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