戦場の恋人達 2
それが『C・R』の定められた運命であり、それを覆すことは誰にも出来なかった。
彼はそれを知っていたから約束は出来なかった。
そしてまた、彼女もそれを知っていた。
彼は交わす言葉もなく、ただ無言で彼女のボディーを抱き寄せた。ガチャっという金属と金属の触れ合う音が暗闇に響いた。
そしてその暗闇は、次第に白み始めていった。
戦況は圧倒的に不利だった。
彼の所属する歩兵部隊は敵の狡猾な罠にはまり、巨大戦車軍団に囲まれてしまったのだ。その白色に輝く巨大な戦車軍団は、八方から少しずつ距離を縮めてくる。
もはや逃げ道もなく、かといって、たいした武器も持っていない歩兵部隊に勝ち目もなかった。
「突撃ー!」
上官の命令と同時に『C・R』達は一斉に戦車に突撃を開始した。それは黒い小さな蟻が巨大な白い象に群がるようであった。
そして、敵もまた攻撃を開始した。
轟音と共に砲撃が始まった。
『C・R』達は吹き飛ばされ、あるいはキャタピラーに踏み潰され、なす術もなく破壊されていった。
力の差はあまりにも歴然としていた。
それでも彼等は突撃を止めようとはせず、自殺行為ともいうべき突進を繰り返した。
彼は脅えていた。
逃げ道もなく、生き残る可能性もないこの状況下で、彼だけが逃げ回っていた。
あの巨大な戦車に突撃する勇気など彼にはなかった。
死ぬのが怖かった。
彼は必死で逃げ続けた。
爆音が彼のすぐそばで聞こえ、彼のボディーは宙に投げ出された。直撃はしなかったが、彼のすぐそばに着弾し、その爆風に吹き飛ばされたのだ。
起き上がろうとしたが足が動かない。
着地のショックで右足首のパーツが故障したらしい。彼は右足を引きずりながら逃げようとした。
しかし、そんな彼の目前に一台の戦車が回り込んできた。
彼は背を向け、再び逃走を開始した。
だが、右足が思うように動かない。
その右足を引きずりながら必死で……しかし、無情にも戦車は彼を見逃さなかった。
その白く輝く砲台がキリキリと不気味な音をたてて、彼に標準を合わせた。
そして、轟音が鳴り響いた。
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