溺れる魚 25
あの日から6年後の今、私は新を待っている。
あの時の、あの約束があったから別れた後、辛いときも乗り越えてこれた。
あの約束が、心の支えだった。
でも、いつの間にか…それに代わるものを、見つけてしまった…。
6年の歳月は、長すぎた。
郁恵からたまに新の話は聞いていた。
高校卒業と同時に家を出て、大学で寮生活を送っているらしい。
郁恵は家を出ることに反対したらしいが…。
いつの間にか雨が…
降り出していた。
まるで6年前の、あの日のようだ…。
私は大きな樹の下に移動し、新を待った。
あの雨の日のことを、
思い出していた…
…その時
「真理…さん?」
懐かしい…
新の声…。
「新…」
そこには、あの頃よりも大人びた、スーツ姿の新がいた。
「真理さん、久しぶり…だね」
新が笑顔で軽く頭を下げる。
私も、笑顔を見せる。
6年前の約束を覚えていてくれた…。
本当に来てくれるなんて…。
なんだか胸がいっぱいで… 言葉が出てこない…。
気づくと私は泣いていた。
「…立派に、なったね」
新は、私を抱きしめた。
続く
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