携帯小説!(PC版)

呼び人 6

[242]  春歌  2009-11-10投稿
「お前、それやめろって何度も言ってんだろがっ」
「いいじゃん減るもんでもないんだし」
「俺のプライドの問題だよ!」
「もー心が狭いんだから」
「うるさいわ!」
高倉はいつまでも変わらない中村の昔からの態度に、嫌なのに安心している自分に嫌気がさした。
拒めないんだよな…。
中村は先程伊織にだけは頭が上がらないと言ったが、実のところもう一人だけいた。高倉にとって伊織の次に厄介な存在。
そのことに多分本人は気付いていないだろうが。いや、気付かれていては困るのだ。
高倉は絶対に気付かれたくなかった。
まぁまず鈍いからそんな心配する必要はないだろうけど、とそんなことを高倉が考えていると、中村がふと思い出したように言った。
「そうそう、聞かなくなったと言えばこれもだ」
「何?」
「『見える』って」
「…………ああ、それな」
「どうして?もしかして見えなくなった?」
「いんや。見えるぜ」
「じゃ、なんで」
「俺は『見えない』『普通の』高校生ってことになってっからだよ」
「…ーーー」
中村は失言だったか、と口を閉じた。
しかし高倉は極普通に続けた。
「無視してりゃ見えようが見えまいが一緒だっての。道ですれ違うあかの他人にいちいち注目する奴なんていねーだろ?」
「まあ、そりゃあ」
「だろ。その無視してる対象を口に出すなんてこたしねーよ。よくわからん噂もあるらしいけど、んなのデマだって言えばそれまで。どーとでもなんだよ」
「…そっか」
「そ。なーんも問題なーし」
それもそうだね、と答えながら、中村は心の中で高倉に問うた。
高倉、君はそれで苦しくない?
しかしそれを口にはしない。
友人が必死で作り上げた薄い一枚の壁を壊す様な真似をする気はなかった。
高倉も中村の内に秘めた疑問を感じてはいても、何も言わない。
二人はお互いの領域に踏み入ってはならない部分があることを知っているから。

感想

感想はありません。

「 春歌 」の携帯小説

ファンタジーの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス