肌とねこ5
予想通り藤堂は三日目に口説いてきた。こうなると自意識過剰もあながち妄想の類いではなくなってくる。
「お茶くらい出してくれても良いだろ?もう寒い季節になってきたし・・・」
額に脂汗を乗せて言うことじゃない!
何もお礼らしいことをしていないこちらの弱味につけこみ、なし崩しを狙うゲス野郎。
「ごめんね〜、本当に。今うち何もないんだ〜。引っ越したばかりだから・・・」
「だったら話でもしようよ。帰っても俺暇だし」知らねぇよ!!
いつまでも諦めない藤堂は二十分ほど粘った。ロビーでの攻防だったためにその間、三、四人が脇を通って行った。
「どうしました?」
最後が隣の今関さんだった。今関さんは素通りせずに声をかけた。さすがの藤堂もこれには退散するしかなかった。
「彼氏さんですか?」
「いいえ。違います」
嘆息で藤堂の後ろ姿を見送る私に今関さんは隣人らしい好奇心を表した。スゴく嫌な思いをしたために、聞いてもらえて逆に助かった。あんなのと痴話喧嘩だと思われたら、恥ずかしくて生きていけない。
「大変ですね・・・」
今関さんは小さく笑った。
「そうですよ。ストーカーでもなきゃ、絶対にあんなのと・・・」
「ストーカー?」
ちょっと驚いた顔で今関さんはこちらに振り向いた。
「ああ、いえ。忘れてください」
「いやいや、それはいけない。もし何なら警察に連絡しないと」
「そんなに大袈裟なものじゃないです・・・」
私は唯の隣人であるはずの今関さんにこれまでの経緯を説明するハメになった。これもひとえに藤堂さまのお陰だ。呪えるものなら呪ってやりたい。
「なるほどね・・・」
今関さんは眉間に皺をつくり、腕組みして考え込んだ。話終わってもこの状況だと帰りにくい。
「そんなにひどい状況ではないんですよ」
「いや、わかりませんよ。女性の夜の一人歩きは危ない」
もう一度今関さんは黙り込み、しばらくして口を開いた。
「私がご一緒しましょうか?さっき会社が○○町にあるって言ってましたよね?私も会社、そこなんですよ」
「ええっ!?それは・・・」
そこまでやってもらう義理はないので断ろうと思ったが、ふと藤堂の顔が浮かんだ。
「大丈夫ですよ。帰るついでですから」
小さく微笑んだ今関さんはハゲてはいても紳士的に見えた。
つづく・・・
「お茶くらい出してくれても良いだろ?もう寒い季節になってきたし・・・」
額に脂汗を乗せて言うことじゃない!
何もお礼らしいことをしていないこちらの弱味につけこみ、なし崩しを狙うゲス野郎。
「ごめんね〜、本当に。今うち何もないんだ〜。引っ越したばかりだから・・・」
「だったら話でもしようよ。帰っても俺暇だし」知らねぇよ!!
いつまでも諦めない藤堂は二十分ほど粘った。ロビーでの攻防だったためにその間、三、四人が脇を通って行った。
「どうしました?」
最後が隣の今関さんだった。今関さんは素通りせずに声をかけた。さすがの藤堂もこれには退散するしかなかった。
「彼氏さんですか?」
「いいえ。違います」
嘆息で藤堂の後ろ姿を見送る私に今関さんは隣人らしい好奇心を表した。スゴく嫌な思いをしたために、聞いてもらえて逆に助かった。あんなのと痴話喧嘩だと思われたら、恥ずかしくて生きていけない。
「大変ですね・・・」
今関さんは小さく笑った。
「そうですよ。ストーカーでもなきゃ、絶対にあんなのと・・・」
「ストーカー?」
ちょっと驚いた顔で今関さんはこちらに振り向いた。
「ああ、いえ。忘れてください」
「いやいや、それはいけない。もし何なら警察に連絡しないと」
「そんなに大袈裟なものじゃないです・・・」
私は唯の隣人であるはずの今関さんにこれまでの経緯を説明するハメになった。これもひとえに藤堂さまのお陰だ。呪えるものなら呪ってやりたい。
「なるほどね・・・」
今関さんは眉間に皺をつくり、腕組みして考え込んだ。話終わってもこの状況だと帰りにくい。
「そんなにひどい状況ではないんですよ」
「いや、わかりませんよ。女性の夜の一人歩きは危ない」
もう一度今関さんは黙り込み、しばらくして口を開いた。
「私がご一緒しましょうか?さっき会社が○○町にあるって言ってましたよね?私も会社、そこなんですよ」
「ええっ!?それは・・・」
そこまでやってもらう義理はないので断ろうと思ったが、ふと藤堂の顔が浮かんだ。
「大丈夫ですよ。帰るついでですから」
小さく微笑んだ今関さんはハゲてはいても紳士的に見えた。
つづく・・・
感想
感想はありません。