幸せをきみに -届け、この歌- 5
あたしはすっかり
和樹のギターに
影響を受けてしまった。
両親に無理を言って
買ってもらったギターを
あいつに見せたら
鼻で笑われた。
「無理やろ」
「何でー?!」
「真央にはできへんって」
そう言って和樹は
馬鹿にしたように笑う。
「そんなことない!
ちょっと練習してんで!
なんなら聞かせたろっか?」
「ええわ、遠慮しとく」
不機嫌になったあたしを見て
和樹はさらに笑った
「うまくなったら
聞かせてや」
忘れもしない、
あの時の和樹の笑った顔。
あれからあたしは
必死にギターを練習した。
あたしは和樹の
いいとこもわるいとこも
何でも知ってる。
好きな色、癖、嫌いな食べ物や、
いろんな表情も。
あたしの知らないあいつなんて
存在しないやろ。
そんなことも
言えそうなくらい。
なのに、
どんどんギターに夢中になった
あたしは何も
気づいていなかった。
少しずつ、でも確実に
遠く離れていっていた和樹に―\r
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