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遠い遠い君へ

[287]  くろ  2006-08-09投稿
私は状況を理解できなかった。
スケッチブックが私達の方に崩れてきたのは分かったけど、
こんなことになるなんて・・・。

晃輝先輩は私を抱きしめるような形になっていた。
顔と体が近い。
一気鼓動が早まる。

「あ、ゴメン・・・。」

先輩は一瞬顔を赤くして、
慌てて私の体を離した。

「すみません・・・。」

「ってか、大丈夫?怪我ない?」

「はい、大丈夫です・・・。」

「ゴメン、咄嗟のことだったから・・・。」

「いえ、良いんです。
 それより・・・ありがとうございます。」

「ははは。良いよ。
 あ、コレ、楽譜。」

「ありがとうございます。」

何事も無かったかのように楽器庫を出る。
やはり、さっきのこともあってか、
気まずい雰囲気が流れる。

でもそんなことどうだって良い。
嬉しかった。
あんなとこで抱きしめられるなんて思っても無かった。
何よりも、私を守ろうとして、
身を挺してくれたことが嬉しかった。

そのあと、パーカスパートと先輩で、
質問の時間を取ったり、
一緒に練習したりした。

晃輝先輩は妙に明るかった。
来るのが2回目なためか、
慣れてしまったのだろう。

楽しい時間はあの時のようにすぐ過ぎてしまい、
半日を終えようとしていた。

家路に着こうとすると、七海が妙に上ずった声で
話しかけてきた。

「紅璃!!今晃輝先輩、先生と話してるみたいだったから、
 ちょっと待ってようよ!」

「え?待ってるって・・?」

「もう、馬鹿だなあ。晃輝先輩を待つに決まってるでしょ。
 一緒に帰るの!
 私は途中で消えるからさ。」

「え〜。無理だよ〜泣」

「良いじゃない。せっかく遠いなか出向いてくれてるのに。」

「え?遠くからって?どういうこと?」

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