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遠い遠い君へ

[274]  くろ  2006-08-09投稿
「ヒッ・・・。」

思わず私は小さく悲鳴をあげる。
どこかで見た顔だ。

「す、すいません、どうしたんですか?」

ずぶ濡れの女は口を開いた。

「紅璃・・・。私よ。
 佳奈よ。」

「え・・・?先輩!?」

佳奈先輩が何故こんなところに?

「ずっと付けてた。あんたと晃輝先輩を。」

「え・・・?」

「ちょっと来なさいよ!!」

佳奈先輩は、私の腕を爪を立てて掴むと、
土砂降りの雨の中へ連れ込んだ。

「あんた、私が晃輝先輩のこと好きだって知ってたよね?」

「はい・・・。」

「なのに・・・どうして?
 一緒に帰ってるの?
 なんでアンタが晃輝先輩のカーディガンを着てるのよお!!」

佳奈先輩は私を憎悪の目で睨み、
カーディガンを凄い力で引っ張ってきた。

「や、やめてください!」

私は、小さく抵抗した。
相手が先輩だと思うと、大それた抵抗はできなかった。

「本当だったら、私があの傘の中に入って、
 あの手に肩を抱き寄せられて、
 私がその温もりをもらうはずなのに・・・。」

先輩は美しい顔をグシャグシャにして泣き出した。
七海が言ってたことは本当だったんだ・・・。
急に恐くなってしまった。

私が押し黙っていると、
先輩はつかつか歩み寄ってきて、私の頬を掴みあげた。

「憎たらしい。泥棒。
 あんた最低よ。くず!!」

そう言って私を罵ると、私を物凄い力で押した。
ばしゃあ!!
水溜まりに突っ込む。

「ふ・・・ふふふ・・・。」
佳奈先輩は、私の髪の毛を掴むと、
結構深い水溜りに顔を押し付けた。

苦しくて、顔をあげようとしても、
先輩の力に勝てず、動かない。

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