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神のパシリ 29

[391]  ディナー  2009-11-11投稿
「魂喰いの出現が、死体のあった位置と仮定するなら、まさに神出鬼没だね。ここやここ…こことか…屋内外関係ないみたいだし」

キアの言葉で、打鞭の先が地図のあちこちを飛び回る。

「まるで罪悪感も、見つかる恐怖すらもない。…本当に人じゃないかもな」

「そうだねぇ。
レミーシュの配置はどうする?」

「…どこにしても同じだな。なら、こちらに都合が良く、かつレミーシュが勘繰らない辺りがいいだろう」

ゼルの指先を目で追う女従者が、打鞭を向けた先。

「ロロの中央広場かぁ」

「あぁ」

「確かに、ここなら見通しは良いし、逃走しても経路の把握は円滑だね」

「…しかも、中央なら街の外へは出にくいはずだ」

「よし、決まりだね」

キアはかがんでいた体を起こす。機転の効く女従者が、すぐ地図を丸めて片付ける。

「じゃ、準備に取り掛かるよ。すぐに部下を集める。……楽しくなってきたなぁ」

悪戯を計画した子供のようにキアは無邪気に笑う。

「レミーシュにはゼルが説得してよ。その方が多分スムーズだし。
今更、魂喰い退治じゃないなんて嘘も通じないでしょ、多分」

「…だろうな。引き受けよう」

素直なゼルの返答に、キアは満足げだ。

「よし、なら実行は明日にしよう。詳細はまた追って連絡するよ」

ゼルは立ち上がる。

そして、暗い部屋を後にした。

暗い謀を頭に持って。

不必要に大きな扉の外に、レミーシュが待っていた。

「…遅かったね…あれ?腕……」

二の腕の出血痕を気にするレミーシュに、ゼルは無表情で返した。

「心配いらん」

「…あ、うん…。そか、すぐ治るもんね」

「そういう事だ。あの頭…キアと腕試ししただけだ」

「…そう。
で、何か分かったの?」

「罠を張る。相手を確かめたい。お前の…力を借りたい」

鳩血色のゼルの瞳に瞳を覗かれ、レミーシュはすぐ紅潮した。

「…えっ…?わ、私でいいの…?」

「お前が…最も適している」

悪魔の囁きに似た、不自然に甘い言葉だった。

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