わからないままで[9]
私は足音を立てないように気をつけて、放送室に隣接している《準備室》へ移動した。
「稲垣です。遅くなってすいません」
ガチャン、と扉を開けて室内に入って来る音。私は準備室から顔だけ覗かせて、稲垣という人を観察した。
そこでは、薄茶色の長い髪が見え、ランドセルを背負ったままの女の子が、小谷に挨拶をしていた。
「あー。稲垣ね。ちなみに下の名前は?」
「あ、途です。稲垣途」
「そっかぁ」
自分か聞いたくせに、小谷は黒のツインテールの髪の先を弄りながら、何処かつまらなそうにしていた。
「秋里ー。来なよ。大丈夫だよぉ」
「へ? 秋里……くん?」
「違いまーす。秋里楽とは、とっても可愛い女の子でしたぁ」
言いながら、私は首を竦めて準備室から出ていった。ポニーテールが微かに揺れる。
「稲垣です。遅くなってすいません」
ガチャン、と扉を開けて室内に入って来る音。私は準備室から顔だけ覗かせて、稲垣という人を観察した。
そこでは、薄茶色の長い髪が見え、ランドセルを背負ったままの女の子が、小谷に挨拶をしていた。
「あー。稲垣ね。ちなみに下の名前は?」
「あ、途です。稲垣途」
「そっかぁ」
自分か聞いたくせに、小谷は黒のツインテールの髪の先を弄りながら、何処かつまらなそうにしていた。
「秋里ー。来なよ。大丈夫だよぉ」
「へ? 秋里……くん?」
「違いまーす。秋里楽とは、とっても可愛い女の子でしたぁ」
言いながら、私は首を竦めて準備室から出ていった。ポニーテールが微かに揺れる。
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