カバに恋する。9
その日は一日中、泣いて過ごした。
大きな声を出して、子供みたいに泣いた。
隣の人に聞こえてもかまわない。今の私はそれどころじゃない。
3年間付き合った彼氏をなくしたんだ。しかも彼氏の浮気で…
信じてたのに…
信じてたのにーっ!!
涙はとめどなく溢れてきた。
部屋を見ると、たーちゃんとの思い出があるものばかりだ。
初めてもらった誕プレ。
ゲーセンで取ってくれたぬいぐるみ。
クリスマスプレゼント。
夏祭りにお揃いで買ったお面。
夏祭りでたーちゃんがとったエリザベス…
エリザベス?
あーっ!エリザベス!
マンガ喫茶に置いてきちゃった…。
なんて薄情なの私…。
腫れ上がった目のまま、マンガ喫茶に向かう。
もうすっかり日は暮れていた。
「…いらっしゃいませ」
よかった。あの人がいる。
「すみません!昨日預かってもらってた金魚、忘れてしまっていて…」
「…お預かりしてます」
足下に置いてあったらしいエリザベスを、その人はカウンターの上に乗せた。
水を足してくれてあって、いっぱいの水の中でエリザベスは気持ちよさそうに泳いでいた。
続く
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