白い天使のうた (7)
週の3日から4日は塚本はその施設へ通うようにしたが、
彼女は雨の日もお構いなく、裸足で傘を差さずにいつもの木々の所でうたっていた。
彼女にとってはうたうこと、それ自体が息をするかのようだった。
時々、施設の中で彼女を見かけることもあったが、
廊下を歩く彼女は、
口をつぐみ、うつむきかげんで、
瞬きしていることも自分では気付いていないのかと思うくらい、
その表情はまるで動かなかった。
一瞬見間違えたかと思い、すぐに彼女だと気付いて声をかけたことがあったが、
不意をつかれた無防備のままの彼女は、
敵意を示すことができず、
悲鳴に近い叫び声を上げて、走り去ってしまった。
それは見ていて、本当に痛々しい姿だった。
彼女とまともに会えるのは中庭くらいで、
それでも、彼女の好きな曲の流れている間だけだった。
曲が始まってもしばらく警戒しているのは、二ヶ月経っても変わらないことで、
アルバムの曲が終了した、と気付くと、
一目散に奥の木々の中へと身を隠した。
彼女が裸足なのは、庭の芝生の上だけかと思ったら、
施設の建物内でも同じことで、受付で来訪者の記入をしている際に、
近くを通る彼女のヒタヒタという足音を、塚本は早くから聞けるようになった。
いつも耳を澄ませて、彼女を驚かすことのないように、
そっと少し離れた所から見守った。
彼女は雨の日もお構いなく、裸足で傘を差さずにいつもの木々の所でうたっていた。
彼女にとってはうたうこと、それ自体が息をするかのようだった。
時々、施設の中で彼女を見かけることもあったが、
廊下を歩く彼女は、
口をつぐみ、うつむきかげんで、
瞬きしていることも自分では気付いていないのかと思うくらい、
その表情はまるで動かなかった。
一瞬見間違えたかと思い、すぐに彼女だと気付いて声をかけたことがあったが、
不意をつかれた無防備のままの彼女は、
敵意を示すことができず、
悲鳴に近い叫び声を上げて、走り去ってしまった。
それは見ていて、本当に痛々しい姿だった。
彼女とまともに会えるのは中庭くらいで、
それでも、彼女の好きな曲の流れている間だけだった。
曲が始まってもしばらく警戒しているのは、二ヶ月経っても変わらないことで、
アルバムの曲が終了した、と気付くと、
一目散に奥の木々の中へと身を隠した。
彼女が裸足なのは、庭の芝生の上だけかと思ったら、
施設の建物内でも同じことで、受付で来訪者の記入をしている際に、
近くを通る彼女のヒタヒタという足音を、塚本は早くから聞けるようになった。
いつも耳を澄ませて、彼女を驚かすことのないように、
そっと少し離れた所から見守った。
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