白い天使のうた (8)
中庭で曲を聴かせることの他に、
塚本は彼女に絵本の読み聞かせを始めた。
読み聞かせる絵本の内容をよくよく注意してやらないと、
彼女は眼を見開きながら、
次の話の展開がどうなるのかと、
怯えながら、絵本と塚本の顔を代わる代わる見ては、
忘れた記憶の恐れだけを引き戻すかのようだった。
うさぎの事件以来、言葉をほとんど失ってしまった彼女が表わす感情表現は、
眉間のしわの寄り具合と、時々締め付けられるかのように胸元を抑える、その二つだけだった。
ほとんど一方的と言えるかもしれない、
読んで聞かせて、何も感想を聞くこともできない絵本の読み聞かせではあったが、
それでも塚本は、
彼女に感情を取り戻して欲しかった。
今まで辛い、痛い経験しかしてこなかったのかもしれない。
塚本の話す愛のあるストーリーに、彼女は
「そんなこともあるの?」
と時々驚いたように眼を丸くして聞いていた。
塚本は彼女に絵本の読み聞かせを始めた。
読み聞かせる絵本の内容をよくよく注意してやらないと、
彼女は眼を見開きながら、
次の話の展開がどうなるのかと、
怯えながら、絵本と塚本の顔を代わる代わる見ては、
忘れた記憶の恐れだけを引き戻すかのようだった。
うさぎの事件以来、言葉をほとんど失ってしまった彼女が表わす感情表現は、
眉間のしわの寄り具合と、時々締め付けられるかのように胸元を抑える、その二つだけだった。
ほとんど一方的と言えるかもしれない、
読んで聞かせて、何も感想を聞くこともできない絵本の読み聞かせではあったが、
それでも塚本は、
彼女に感情を取り戻して欲しかった。
今まで辛い、痛い経験しかしてこなかったのかもしれない。
塚本の話す愛のあるストーリーに、彼女は
「そんなこともあるの?」
と時々驚いたように眼を丸くして聞いていた。
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