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デッド オア...《仮終》

[330]  兼古 朝知  2009-11-17投稿


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「え?ウチが新人戦出るんですか?」
私は目を丸くした。
「そうだよ〜。珍しいよねぇ?」
先輩がケータイをいじりながら答える。


あれから…
1年が過ぎた。

私は高校一年生になった。
私の通うこの高校は、就職率が極端に高い代わりに、部活があまり盛んではない。
新人戦には出たことがないような高校なのだ。
「ま、頑張ろね〜」
ゆるりとした笑顔で、先輩は言った。
「…はいッ」
私も笑って答えた。

(信に逢えたらいいな)

ふと心のどこかで、そう思う私がいた。


==

新人戦当日。
試合会場である体育館では、開会式前の練習が各学校で行われていた。
何回でも見てきた、試合前のこの独特な雰囲気。
無論、私もその中で練習に参加している一人だ。

――どんっ。

(あ、ぶつかった?)
他校の誰かにぶつかってしまったようだ。
ぶつかった相手に頭を下げようと、私は振り向いた。

「…!?」

言葉を、なくした。

私が振り向くと同時に振り返ったのは。

「!…お前…!?」
「し…ん…」

信だった。


==

…本当は、あの場でたくさん話したかった。

…本当は、もっと見ていたかった。


でも、私も信もすぐに何事もなかったかのように練習を再開した。
…他人行儀に頭を下げた後で。

私たちの練習が終わったあと、ふと 信とぶつかった場所に目をやると…。
信はさっきまでと同じように練習を続けていた。

「…強く…なったね」

呟いて、私は選手と観客の入り交じる方へと、姿をくらました。

信が転校すると聞いてから…
私は自分がどこかおかしくなったのだと思った。
だって それから信の事しか考えられなくなったから。
祖父が死んでも なお、信の事を考えてしまう自分がいたから。


…恋は盲目。

まさに私は、その典型となってしまったのだ。

人混みの中に紛れた私は…人知れず、涙を流していた。

私の初恋は、この瞬間に終わったのだと思う。


―― 終 ――

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