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ロストクロニクル8―23

[365]  五十嵐時  2009-11-18投稿
「・・・どうして、私の、術が!」
タクトは静かに剣を鞘に収めた。
「・・・イエルさ」
タクトは傀儡の方を向き、目からわずかな曲線を描いた薄いガラスを取り出した。
「はぁはぁ、コンタクトレンズ、だと」
「使い方があってて良かった」
「こんな、ことが・・・私は認めない!認めないぞ!」
傀儡は立ち上がった。
「なに!」
タクトは身構えた。
「はぁはぁ、私は、負けない!」
傀儡は自らの周りに無数の鎖を地面から出し、鎖が再び地面に戻っていった時には傀儡の姿はなかった。
「・・・逃げられたか」
そして、タクトは漠然と考えた。
この戦いでどれほどの犠牲が出たのだろう。シルヴァ、イエル、シルヴァの仲間達、ルパス兵、それに・・・旅を共にしてきた仲間達
「こんな戦い何の意味があるんだ!結局、木彫りの不死鳥も島民達の自由も手に入れらなかったじゃないか!」
タクトは天に向かって叫び、目の前にある装置を滅茶苦茶に斬り始めた。
装置が壊れて動かなくなっても斬り続けた。
そして、もう手に力が入らなくなった頃、剣は手を滑り落ち、それにつられるようにタクトも膝を折り、頭を垂れた。
「・・・失ったものが、多過ぎる・・・」
その時、タクトの背後から一筋の光が差した。
部屋の扉が開いたようだ。
「何を失うんだ?タクト」
タクトはゆっくりと頭を上げた。
「タクトさん!大丈夫!少なくとも僕達はここにいますよ」
ゆっくり光の方を振り返る。
「失ったものもあるけど、収穫は十分だと思うけど?」
光の中に傷だらけの三人組が見えた。
「タクト。あなたのおかげで・・・」
弓矢で部屋の窓が割られていく。
一枚割れる毎に、眩しい光がさしてくる。
久し振りのその光を全身で浴びる。
「霧は晴れた」
「・・・眩しい」
タクトの声は消え入るように小さかった。
「みんなが、いる」
タクトはたまらなく嬉しくなり、目頭が熱くなった。
「タクトさん。これを」
フラットから手渡されたのは木彫りの不死鳥のパーツだった。
「木彫りの不死鳥だ!」
「傀儡から奪ってやったぜ!」
ウェドの自慢気な顔があった。
「さぁ、タクト。こんな島早く出ましょ」
「でも、島民達が・・・」
パールはにこにこと笑って見せた。
「窓の外をみて見て」

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