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屋上に登る話。

[340]  アイ  2009-11-18投稿

ビルの屋上に登るのは

人を見下したいからじゃない

無謀に飛びたいからじゃない

独りになりたいから

蒼の中で風を浴びたいから

両手を広げて霧のような雲を受けとめて

高らかに声を張り上げて唄うんだ

たとえ世界のすべてを知っても

怯えないように

敗けないように

すべてに毅然と立ち向かえるように

人にやさしくできるように

そんな想いを込めて唄うんだ

涙が空に舞ってゆく

やがてそれは光とかして

空を羨む一人の少女の手のひらの中に

愛の羽となって証を残す

それは誰かが叫んだ唄

それは誰かが流した涙

想いはいつも気づかぬところに

そっと日常の隅などに転がっている

耳を澄ますと聞こえてくる

――ああそれなのに

耳の悪い誰かは今日もまた屋上に登る

独りになりたいからじゃなく

人を見下すために

無謀にも飛ぶために。

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