魔女の食卓 21
* 居酒屋でOLの戸倉、朝倉が山口を待っている *
戸倉
「遅いよ、何してたのよ?」
山口
「ごめん、ごめん。
会社を出る前にトイレに入ったら紙がなくって…
そんな事はどうでもいいのよ。
それよりも、ビックリするような事があったのよ。
さっきね、会社を出てここに向かって歩いてたのよ。
そしたらね、なんと石崎部長の車があたしを追い抜いていったのよ」
戸倉
「別にビックリする事ないじゃない。
歩いてるあんたより、車の部長のほうが早いに決まってるもん」
山口
「あのね、あたしと部長と、どっちが早いかって話じゃないのよ。
その先よ。
それでね、あたしを追い抜いた部長の車がさぁ、少し先の路地の所で止まったのよ。
そしたらね、その路地から彼女が出て来てさぁ、部長の車に乗り込んじゃったのよ。
それでそのまま行っちゃったの。
どっかへ」
戸倉
「彼女って、まさか…」
山口
「そうよ、そのまさかの川島さんなのよ。
信じられる?」
戸倉
「とても信じられない。
その話も、あんたの事も」
朝倉
「ねぇ、その目撃談って今夜の事?」
山口
「そうよ、ついさっきよ」
朝倉
「となると、これはちょっと深刻だよ。
かなりヤバい感じよねぇ。
だってさぁ、さっき部長が退社する直前にさぁ、大西麗子が来たんだもん、営業部に」
戸倉
「来たの?彼女」
朝倉
「うん、部長が帰ろうとしている所へさ。
それでね、あたし別に聞き耳立ててた訳じゃないわよ。
ただ、自然に聞こえちゃったのよ」
山口
「誰もそんな事は責めないわよ。
むしろ、よくぞ聞き耳を立てたって、誉めてあげたいくらいよ。
それで、どんな話をしてたの?」
朝倉
「それがねぇ、簡単に言えば大西麗子が食事に行こうって誘ってるのよ」
戸倉
「食事だけじゃ済まないでしょ。
子供じゃないんだから」
山口
「そうよね。
食事の後は適度な運動が必要よね。
オ・ト・ナ・は」
朝倉
「まったく、あんた達は…
まぁ、いいわ。
とにかくね、彼女が部長を食事に誘ったの。
そしたらさぁ、部長ったら
『今夜はダメだ。
これから接待に付き合わなくっちゃいけないんだ』
って言って食事の誘いを断ってね、さっさと行っちゃったのよ。
彼女を残してさ」
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