子供のセカイ。101
――次の日。
ジーナの承諾を得て、耕太の言う『道』を進む話は、あっさりと決まった。
それどころか。
「師匠!今日も剣の手ほどき、お願いします!」
「……仕方ないな。行くぞ、耕太。」
「押忍!」
なぜか通常以上に仲良くなってしまったジーナと耕太を、王子は薄気味悪そうに見ていた。美香は呆れながらも、
「ジーナって、人との仲良くなり方が男の子みたいね。」
と、ぽつりと呟いた。
ホシゾラから聞いた話によると、二人は昨日ずっと真剣で戦っていたらしい。それも楽しそうに笑いながら。剣の試合をして仲良くなるなど、美香としては考えられないことだった。だいたい、なぜ仲良くなるのに喧嘩する必要があるのか、さっぱり理解できない。だが、男子とは時にそういうことがあるものだ、というのは、なんとなく知っている。ジーナのはつらつとした様子を見て、美香は、まあいいか、と肩をすくめた。
それからの日々は、ぬるま湯につかるかのごとく、ゆったりと穏やかに過ぎていった。美香は毎日王子の元を訪れ、話をした。二人とも温和な性格なので、そこにはいつもふわふわとした空気が流れ、ホシゾラが加わるとそれはさらに柔らかなものとなった。そこへ稽古の休憩だ、とジーナと耕太がどやどやと乗り込んでくる。なんだかんだ言って、結局みんな重症の王子が心配なのだ。だが、軟弱そうに見えて意外と強かな王子は、医者も驚くほどの早さで傷を完治していった。
「僕はもともと癒しの力を持ってるからね。」
美香にだけこっそりと囁いた王子は、片目をつむってみせた。確かに、王子のいた最初の領域では、美香が大怪我をした時に王子の傍らにいた月が美香を治癒してくれたのだった。
「あなたは、領域を越える時にあの月と飛ぶ力を失ったのよね?」
「そうだよ。あの力が残っていればみんなを癒すことができるんだけど……。今はわずかに自分を治癒する力があるだけだ。」
美香はベッドのふちに腰かけたまま、うつむいて思案した。
「そういえば、」
「うん?」
「ジーナは何を犠牲にしたのかしら?なんだかんだでうやむやになっちゃって、結局聞いてなかったわ。」
王子は包帯の取れた頭を微かに横に振りながら、困ったように微笑んだ。
「それはあまり追及しない方がいいと思うよ。」
「どうして?」
王子は遠い目をしていた。美香は黙って返事を待った。
ジーナの承諾を得て、耕太の言う『道』を進む話は、あっさりと決まった。
それどころか。
「師匠!今日も剣の手ほどき、お願いします!」
「……仕方ないな。行くぞ、耕太。」
「押忍!」
なぜか通常以上に仲良くなってしまったジーナと耕太を、王子は薄気味悪そうに見ていた。美香は呆れながらも、
「ジーナって、人との仲良くなり方が男の子みたいね。」
と、ぽつりと呟いた。
ホシゾラから聞いた話によると、二人は昨日ずっと真剣で戦っていたらしい。それも楽しそうに笑いながら。剣の試合をして仲良くなるなど、美香としては考えられないことだった。だいたい、なぜ仲良くなるのに喧嘩する必要があるのか、さっぱり理解できない。だが、男子とは時にそういうことがあるものだ、というのは、なんとなく知っている。ジーナのはつらつとした様子を見て、美香は、まあいいか、と肩をすくめた。
それからの日々は、ぬるま湯につかるかのごとく、ゆったりと穏やかに過ぎていった。美香は毎日王子の元を訪れ、話をした。二人とも温和な性格なので、そこにはいつもふわふわとした空気が流れ、ホシゾラが加わるとそれはさらに柔らかなものとなった。そこへ稽古の休憩だ、とジーナと耕太がどやどやと乗り込んでくる。なんだかんだ言って、結局みんな重症の王子が心配なのだ。だが、軟弱そうに見えて意外と強かな王子は、医者も驚くほどの早さで傷を完治していった。
「僕はもともと癒しの力を持ってるからね。」
美香にだけこっそりと囁いた王子は、片目をつむってみせた。確かに、王子のいた最初の領域では、美香が大怪我をした時に王子の傍らにいた月が美香を治癒してくれたのだった。
「あなたは、領域を越える時にあの月と飛ぶ力を失ったのよね?」
「そうだよ。あの力が残っていればみんなを癒すことができるんだけど……。今はわずかに自分を治癒する力があるだけだ。」
美香はベッドのふちに腰かけたまま、うつむいて思案した。
「そういえば、」
「うん?」
「ジーナは何を犠牲にしたのかしら?なんだかんだでうやむやになっちゃって、結局聞いてなかったわ。」
王子は包帯の取れた頭を微かに横に振りながら、困ったように微笑んだ。
「それはあまり追及しない方がいいと思うよ。」
「どうして?」
王子は遠い目をしていた。美香は黙って返事を待った。
感想
感想はありません。