魔女の食卓 31
「専務が想像している以上に、彼女は専務を驚かせるはずです」
「おっ!
来た来た!
スープが来た!」
そう言った藤本は、すでにスプーンを手につかんでいた。
石崎武志と藤本は、食後のコーヒーを飲みながら、今出された料理について語り合っていた。
特に藤本はすっかりご機嫌で、
『こんなにうまい物は食べた事がない』
を何度も繰り返していた。
厨房から出てきた川島美千子が、ほかのテーブルの椅子を引き寄せ、二人の座っているテーブルの横に座った。
藤本は彼女を見ると、ペコリと頭を下げた。
「川島さんとおっしゃったかな。
さっきは失礼な態度をとって済まなかった。
しかし正直驚いたな。
あなたの作った料理に比べたら、この前の店の料理なんか、ただの食糧としか思えん」
「専務さんに喜んでいただければ、私も嬉しいです」
「喜ぶなんて、そんなもんじゃない。
感動しとるよ。
料理の腕もすごいが、あのワインの選択にも感服した。
特にあの魚料理の時。
魚料理に赤ワインをもってくるとは。
しかも、それが絶妙なんだ。
いや、本当に恐れ入った」
「誉めていただいて嬉しいわ。
実はあの魚料理には、最初から赤ワインしか合わないんです。
よく
『魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン』
って言うじゃありませんか。
でも、それは正式には間違いなんです。
正式には
『白ワインを使って作った料理には白ワイン、赤ワインを使って作った料理には赤ワイン』
が正解なんです。
つまり、料理に使ったワインと飲むワインを合わせるわけです。
ただ、一般的には魚料理には白ワインを使い、肉料理には赤ワインを使うから
『魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン』
が法則的に当てはまってしまうんです。
でも、今夜の料理のように、例外的に魚料理に赤ワインを使う事も希にあります。
特にクセの強い魚や、油分の多い魚の場合は、白ワインではちょっと弱いんです。
赤ワインの力強さを使って、初めて料理としてのバランスがとれるんです。
そんな時には、やはり飲むワインも赤ワインを合わせたほうが、いい結果が生まれるんです。
逆に肉料理にも白ワインを使う事がありますよ。
ごく淡白な肉の場合、赤ワインを使うと肉の持ち味が抑え込まれてしまうんです。
だから、白ワインを使って、その淡白な味を引き立ててあげるんです」
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