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魔女の食卓 40

[407]  矢口 沙緒  2009-11-24投稿


朝倉
「あんただけは、絶対逃がさない!」
山口
「ねぇ、あたしの愛の悩み相談室は、どうなっちゃったの?」
朝倉
「また後日ね。
今はこの人の不倫相手を問い詰めるほうが急務なの。
さっ、白状しなさい!
やっぱり妻子持ちなの?」
戸倉
「分かったわよ。
そうよ、妻子持ちよ。
しかも子供は四人だってさ。
子供の数からいったら、あたしの勝ちね。
えっへん!」
朝倉
「うー、よく分からないけど、なんだか悔しい〜」
山口
「ねぇ、何かもっと違う事で自慢しようよ」



日はすでに落ちていた。
地下駐車場の出口近くに、一台の紺の大衆車が止まっていた。
大西麗子が借りたレンタカーだ。
自分の車では目立ち過ぎるのでレンタカーを借り、その中で彼女は石崎武志の車が出てくるのを待っていた。
興信所に頼もうかとも思ったが、それ自体が恥のような気がして、できなかった。
浮気の調査を依頼するという事は、
『浮気をされる可能性のある女』
という事を自分自身で認めているようで、それは彼女のプライドが承諾しなかった。
あえて黒系の服装をして、彼女はじっと待ち続けた。
この行為自体、彼女には我慢ならないものがあった。
常にどんな女よりも優位に立ってきた彼女が、他の女の影に脅える、惨めな女に成り下がった気がする。
だが、だからこそ許せなかった。
このまま、うやむやに引き下がる事はできない。
自分が、今まで通りの自分であるためには、その相手と正面から向き合い、戦いを挑まなくてはならない。
毅然とした態度で。
そして、この戦いに勝つ事が彼女の絶対条件だ。
やがて見慣れた車が出てきた。
運転しているのは、間違いなく石崎武志だった。
乗っているのは彼一人だけだ。
大西麗子はゆっくりと車を発進させた。
尾行は彼女には初めての経験なので、どのくらい間隔を開けていいのか分からなかった。
だが、いくらなんでも、すぐ後ろはまずいだろう。
とりあえず、二台の車を間に挟む事にした。
石崎武志の車はモスグリーンの外車で、あまり見掛ける車ではなかったので、そのてん見失う可能性は低かった。
地下駐車場を出て五分もしないうちに、石崎武志の車が左のウインカーを点滅させ止まった。
大西麗子は突然の彼の行動に戸惑った。

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