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猫役場に勤める猫

[577]  となりのトトりん  2009-11-26投稿
いざ、改札口を通らんとする際、モタモタしてしまうと怪訝な顔付きでみなが覗き込んでくる。

それはあまり好ましくないので前もって白の手袋を外して懐からチケットを用意していた。

改札口は一つしかなく不便なところだ。

右側にはチケットを自動的に読み込む機械が設置されている。

以前は動きの早い細身の猫がチケット切りの職務に就いていたが今はどこも自動化が進む。

機械は次々にチケットを飲み込み列を消化していく。

さあ自分の番が来た。
準備は万端である。
速やかにチケットを流し込むとビィッと大きな大きな音がなる。

まるで怪鳥の泣き声だ。このままでは改札口を通ることはできない。

みなが顔をぐいぐいと押し出し暗黙の批難を浴びせる。

改札口の横には駅猫が常駐する駅猫室がある。

冬場は朝の通勤時だろうとお構いなしに薄汚れた窓口を締め切ってなかの温かい空気が流れ出ないようにしていた。

硝子をトントントンと叩く。

しばらく待ってもう一度叩こうとするとひげもじゃの駅猫がガラリと窓口を半分だけ開いた。

『何か?』

事を説明してチケットをみせると駅猫はチケットをうーんうーんと唸りながら目をぱちくりぱちくりさせた。

いよいよとばかりに大きな大きな虫眼鏡を取り出して今度は遠ざけたり近づけたり。

おもむろにこのチケットでは乗れないよとひげもじゃの口を動かした。

そんな馬鹿な昨日も同じように役場まで通勤したチケットだ。

すぐになぜかと問うた。駅猫はぶっきらぼうにこのチケットの改札口は裏手にあるよ。

何を言ってるのだろう。昨日は確かにこの改札口から汽車に乗ったのだ。

このままでは役場に遅刻してどやされてしまう。

すぐに裏手に廻ると今まで知らなかった線路が続いていた。

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