流狼−時の彷徨い人−No.28
抜刀した半次郎を、近衛兵が一斉に取り囲んだ。
彼等はえりすぐりの兵士であり、発する気から能力の高さを察することができた。
中でも信玄の傍らから離れず護衛している男からは、尋常ではない力を感じていた。
半次郎はこの男を知っている。武田家の中で一ニを争う剣の使い手、南雲一蔵である。
これだけの敵を相手にし、窮地に立たされた半次郎だったが、彼の気には僅かな揺らぎもなかった。
信玄を切ると決めた時点で、彼は心を無にしていた。
それ故に動ずることなく、素早い気の発動を可能にしていた。
だが、十ニ名もの手練を相手に、全てに対処するだけの気の発動は、まだ半次郎には無理であった。
しかし彼は、その問題すら瞬時に解決させていた。
半次郎は全ての空間に気を張り巡らすのは無理だと感じると、自分の間合いにのみ、気を張り巡らした。それにより、死角からの攻撃にも即座に対応ができるのである。
取り囲まれた半次郎は、その中心で平青眼に構えていた。
その立ち姿は力みのない自然体で、美しくさえ見えた。
彼に僅かの隙も見出だせない兵士達は、数で圧倒しながらも攻めあぐんでいた。
意を決した一人の兵士が前方より距離を詰めるが、それでも半次郎の構えは崩れない。
その兵士が間合いに入る寸前、背後から音も無くにじり寄る兵士が半次郎に襲い掛かる。
間合いを侵犯した敵に反応し、刀を振り払う半次郎。すると、澄んだ金属音を奏でて相手の刃が宙を舞った。
小枝でも切断するように刀を切り裂いた剣技に、兵士達の気が一瞬乱れた。
半次郎はこれを見逃さず、一気に攻勢へと転じる。
武器を奪われても戦意を失わぬ眼前の兵士は、すぐさま脇差しに手をかけるが、抜くよりも先に半次郎の刀が足を貫いていた。
続けざまに後ろの兵士の足も貫いき、瞬時に二人の戦闘力を奪うと、半次郎は一蹴りで他の兵士との距離を詰め、三人の四肢を切り付けていた。
瞬く間に五人を倒した半次郎に、残りの近衛兵達は一斉に襲いかかった。
その兵士達の合間を、林の中を吹き抜ける風の如く、半次郎は駆け抜けていた。
その疾風が過ぎ去った跡には、四人の兵士が倒れていた。足を切られた者、肩を貫かれた者と様々だったが、誰一人として命を絶たれた者はいなかった。
彼等はえりすぐりの兵士であり、発する気から能力の高さを察することができた。
中でも信玄の傍らから離れず護衛している男からは、尋常ではない力を感じていた。
半次郎はこの男を知っている。武田家の中で一ニを争う剣の使い手、南雲一蔵である。
これだけの敵を相手にし、窮地に立たされた半次郎だったが、彼の気には僅かな揺らぎもなかった。
信玄を切ると決めた時点で、彼は心を無にしていた。
それ故に動ずることなく、素早い気の発動を可能にしていた。
だが、十ニ名もの手練を相手に、全てに対処するだけの気の発動は、まだ半次郎には無理であった。
しかし彼は、その問題すら瞬時に解決させていた。
半次郎は全ての空間に気を張り巡らすのは無理だと感じると、自分の間合いにのみ、気を張り巡らした。それにより、死角からの攻撃にも即座に対応ができるのである。
取り囲まれた半次郎は、その中心で平青眼に構えていた。
その立ち姿は力みのない自然体で、美しくさえ見えた。
彼に僅かの隙も見出だせない兵士達は、数で圧倒しながらも攻めあぐんでいた。
意を決した一人の兵士が前方より距離を詰めるが、それでも半次郎の構えは崩れない。
その兵士が間合いに入る寸前、背後から音も無くにじり寄る兵士が半次郎に襲い掛かる。
間合いを侵犯した敵に反応し、刀を振り払う半次郎。すると、澄んだ金属音を奏でて相手の刃が宙を舞った。
小枝でも切断するように刀を切り裂いた剣技に、兵士達の気が一瞬乱れた。
半次郎はこれを見逃さず、一気に攻勢へと転じる。
武器を奪われても戦意を失わぬ眼前の兵士は、すぐさま脇差しに手をかけるが、抜くよりも先に半次郎の刀が足を貫いていた。
続けざまに後ろの兵士の足も貫いき、瞬時に二人の戦闘力を奪うと、半次郎は一蹴りで他の兵士との距離を詰め、三人の四肢を切り付けていた。
瞬く間に五人を倒した半次郎に、残りの近衛兵達は一斉に襲いかかった。
その兵士達の合間を、林の中を吹き抜ける風の如く、半次郎は駆け抜けていた。
その疾風が過ぎ去った跡には、四人の兵士が倒れていた。足を切られた者、肩を貫かれた者と様々だったが、誰一人として命を絶たれた者はいなかった。
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