魔女の食卓 48
戸倉
「あんた知らないの?
あっちこっちで噂になってるわよ。
なりふりかまわず、興信所や探偵社を使って、捜しまくってるそうよ。
とっ捕まえて、文句のひとつも言わなくっちゃ、気が済まないでしょ、彼女だって」
朝倉
「でも、変じゃない。
今さら川島さんを捕まえて恨み言を言ったって、もう元に戻んないよ、何もかも。
それなのに、そんなに懸命に捜すかしら」
山口
「ねぇ、ちょっと。
さっきから気になってたんだけどさぁ。
あのカウンターの隅で飲んでるの、大西麗子じゃない?」
戸倉
「えっ?
どこどこ?
あっ、本当だ!
あんたねぇ、そういう事は、もっと早く言うもんだよ」
朝倉
「まずい!
聞かれたかなぁ」
山口
「大丈夫みたい。
さっきから下向いて、一人でチビチビ飲んでるもん」
戸倉
「だいぶ参ってるみたいね。
あのさっそうとした雰囲気が、まるでないじゃない」
朝倉
「彼女、今なにを考えてんのかなぁ?
なんでそんなに必死になって川島さんを捜すんだろ?」
山口
「よし!
あたし本人に聞いてくる」
戸倉
「ちょっと、よしなさいよ!」
朝倉
「馬鹿ねぇ、やめなよ!
…あら、行っちゃった」
戸倉
「本当に好奇心ばっかり先走っちゃって、怖い物なしなんだから」
朝倉
「でもさぁ、知りたいよね」
戸倉
「そりゃ、知りたいけどさぁ。
何も本人に直接聞かなくったって
…あっ、帰ってきた。
あれ?
なんだか首かしげてるよ」
朝倉
「ねぇ、聞いてきたの?」
山口
「うん、聞いたよ。
なんで川島さんの行方を捜してるんですか?
って」
戸倉
「そしたら?」
山口
「それがさぁ、変な事言うのよ」
朝倉
「変な事?
いったいなんて言ったの?」
山口
「あのね、あたしが
『今さら川島さんを捜し出して、どうするんですか?』
って聞いたらね。
そしたら彼女、自分の右手の甲をじっと見て、こう言ったのよ
『あのデミグラスソースを、せめてもう一度だけでも』
って」
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