子供のセカイ。105
『道』の手がかりを持つ耕太を先頭に、美香、王子、ジーナの順に、舞子救出を目指す彼らは次々と“生け贄の祭壇”を出ていった。
ホシゾラは手を振って見送った。透明の壁を通り抜けて全員の姿が見えなくなると、一気に心細くなった。漠然とした寂寥が胸の内を覆っていく。ホシゾラは深く、肺の奥から押し出すようにして息を吐くと、遠い目で雲行きの怪しい空を見上げた。
「……幸運を。」
呟いた声は頼りなく空気を震わせ、湿気を含みだした風にあっけなくかき消されていった――。
領域の境の壁を初めて抜けた耕太は、その冷たさに思わず身震いした。
反射的に閉じていた目をゆっくり開く。そして、愕然となった。
「なんだこりゃ!?」
続いて壁を抜けた美香も、驚きのあまり悲鳴に近い声で叫んだ。
「領域がないわ!ここは一体、何なの……!?」
四人は変に歪んだ空間の中にいた。足は何かの上に立っているのだが、その何かも定かではない。手を伸ばせば空気を突き抜けたが、まるですぐそこが壁であるかのような錯覚を覚え、閉塞感に息苦しさを感じる。
そこはまるで瞼の裏のような世界だった。視覚は何の色も認識せず、かといって闇の中というわけでもない。これなら“闇の小道”の方がまだマシだ。美香はくらくらする頭で、そんなことを考えた。
王子はすぐに気分が悪くなって吐きそうになった。体をくの字に折って座り込みかけた所を、背の高いジーナが後ろから抱えるようにして支えた。ジーナは懸命に悪寒をこらえているせいか、目つきが鋭く、額に大粒の汗をかいている。
「ここは何だ!?一体どうなっている!」
「ハァッ…!ハァッ…!」
酸素がうまく吸えない。美香は喉元に手を当て、へなへなとその場に膝をついた。
「美香!お、おい、しっかりしろ!」
耕太自身よろめきながらも、なんとか美香に近寄り、肩を貸して立ち上がらせようとする。しかしうまく体に力が入らず、軽い美香の体さえ容易に持ち上げられなかった。
「耕太…、」
「くそ!何がどうなって……どうすりゃいいんだ……!」
こんな話は聞いていない。『道』を用意するとは言われたが、それが一体どんなものであるのか、あの子供は何も教えてくれなかったのだ。
ホシゾラは手を振って見送った。透明の壁を通り抜けて全員の姿が見えなくなると、一気に心細くなった。漠然とした寂寥が胸の内を覆っていく。ホシゾラは深く、肺の奥から押し出すようにして息を吐くと、遠い目で雲行きの怪しい空を見上げた。
「……幸運を。」
呟いた声は頼りなく空気を震わせ、湿気を含みだした風にあっけなくかき消されていった――。
領域の境の壁を初めて抜けた耕太は、その冷たさに思わず身震いした。
反射的に閉じていた目をゆっくり開く。そして、愕然となった。
「なんだこりゃ!?」
続いて壁を抜けた美香も、驚きのあまり悲鳴に近い声で叫んだ。
「領域がないわ!ここは一体、何なの……!?」
四人は変に歪んだ空間の中にいた。足は何かの上に立っているのだが、その何かも定かではない。手を伸ばせば空気を突き抜けたが、まるですぐそこが壁であるかのような錯覚を覚え、閉塞感に息苦しさを感じる。
そこはまるで瞼の裏のような世界だった。視覚は何の色も認識せず、かといって闇の中というわけでもない。これなら“闇の小道”の方がまだマシだ。美香はくらくらする頭で、そんなことを考えた。
王子はすぐに気分が悪くなって吐きそうになった。体をくの字に折って座り込みかけた所を、背の高いジーナが後ろから抱えるようにして支えた。ジーナは懸命に悪寒をこらえているせいか、目つきが鋭く、額に大粒の汗をかいている。
「ここは何だ!?一体どうなっている!」
「ハァッ…!ハァッ…!」
酸素がうまく吸えない。美香は喉元に手を当て、へなへなとその場に膝をついた。
「美香!お、おい、しっかりしろ!」
耕太自身よろめきながらも、なんとか美香に近寄り、肩を貸して立ち上がらせようとする。しかしうまく体に力が入らず、軽い美香の体さえ容易に持ち上げられなかった。
「耕太…、」
「くそ!何がどうなって……どうすりゃいいんだ……!」
こんな話は聞いていない。『道』を用意するとは言われたが、それが一体どんなものであるのか、あの子供は何も教えてくれなかったのだ。
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