幸せをきみに -届け、この歌- 13
和樹はほとんど学校に
来なくなった。
あたしの気持ちとは反対に
事実かどうかもわからない
そんな噂ばかり聞いた。
あたしの知らない和樹が
あいつがいないところで
増えていく。
3年生になってクラスは変わり、
配られた新しいクラスの名簿。
そのどのクラスにも
成瀬和樹という字はなかった。
あたしが和樹の転校を知ったのは
その数日後、
やっぱり噂によって知らされた。
――「…翔太は元気?」
長い沈黙の後、
やっと和樹が口を開いた。
「翔ちゃん?」
「うん」
「まあ…元気やけど…」
「ふうん」
自分で聞いておきながら
和樹の反応は薄かった。
「何で?」
とあたしが聞くと
「きっとあいつは優しいから
おまえに振り回されとるんやろな
真央のことやから
相変わらず
泣いてばっかなんやろ」
と笑って答えた。
「…そんなことない」
あたしは少しすねて答えた。
和樹はそんなあたしを見て
さらに笑った。
「どうせ、今日も泣いたんやろ?」
あたしはびっくりして振り返ると
和樹の視線とぶつかった。
和樹の目は心の中まで
見てそうであたしはまた
視線を反らした。
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