子供のセカイ。106
このままここにいては全員やられてしまう。危機感を抱いたジーナは、一度“生け贄の祭壇”に戻ろうと、王子の体を引っ張った。しかし彼はジーナに制止をかけると、青い顔で瞳だけをぎらつかせて耕太を見た。
「君が言い出した『道』だろう…!早くその『道』を見つけるんだ、手遅れになる前に……。」
「そんな言い方、」
「いや、王子の言う通りだ。ここは耕太だけが頼りなんだ。」
ジーナは美香に言い聞かせ、同時に耕太に鋭い視線を投げかけた。耕太はパニックに陥りそうになっていた。責任の重さに、胃がキリキリと悲鳴を上げる。暗闇の中の小さな子供の姿を、そのいやに大人びた言葉遣いを思い出そうとするが、はっきりした像が結べない。当たり前だ。見たことがないのだから。
何で詳しく教えてくれなかったんだ。記憶の中のいい加減な人物に、突発的な怒りが湧いた。美香は隣で座り込んだまま、苦しそうに呼吸をして、ぼんやり目を瞬かせている。今にも意識が飛びそうなその姿に、焦りと恐怖が喉までせり上がって来た。――くそっ、どうすればいい。ちくしょう、どうすれば……、どうすれば『道』は開ける!
「答えろっ!!」
堪えきれず、耕太は大声で叫んだ。
その時だった。
しゅるるるるっ!
柔らかな布が擦れるような音が響いて、歪んだ空間の遥か彼方から耕太の目の前まで、金色のリボンがのびてきた。
「っ!」
目の前でひらひらと踊るように揺れるその紐を、耕太は反射的に掴んでいた。
ぐんっと体が引っ張られる感覚に驚く間もなく、耕太は慌てて美香の腰に手を回すと、ジーナへと振り返り必死に叫んだ。
「師匠っ!」
「わかっている!」
ジーナは王子を脇に抱えたまま、素早く耕太に走り寄った。耕太はリボンに引っ張られてずるずると地面を引きずられていたが、ジーナががしりと耕太の肩に手をかけた時にはすでに限界だった。
「ぅわあっ!」
金色のリボンがしゅるしゅると耕太の腕に巻きつき、さらに美香、王子、ジーナの腕にも絡まった。そして次の瞬間、その細さからは考えられない強度で四人の体をぐいっと引っ張り、四人は一つの塊のようになって勢いよく宙に浮いた。
リボンがすごいスピードで来た方向へと戻っていく。縮んでいくと言った方が正しいかもしれない。風が耳元でびゅんびゅんと鳴り、髪はかき乱れて、美香と耕太は絶叫した。
「君が言い出した『道』だろう…!早くその『道』を見つけるんだ、手遅れになる前に……。」
「そんな言い方、」
「いや、王子の言う通りだ。ここは耕太だけが頼りなんだ。」
ジーナは美香に言い聞かせ、同時に耕太に鋭い視線を投げかけた。耕太はパニックに陥りそうになっていた。責任の重さに、胃がキリキリと悲鳴を上げる。暗闇の中の小さな子供の姿を、そのいやに大人びた言葉遣いを思い出そうとするが、はっきりした像が結べない。当たり前だ。見たことがないのだから。
何で詳しく教えてくれなかったんだ。記憶の中のいい加減な人物に、突発的な怒りが湧いた。美香は隣で座り込んだまま、苦しそうに呼吸をして、ぼんやり目を瞬かせている。今にも意識が飛びそうなその姿に、焦りと恐怖が喉までせり上がって来た。――くそっ、どうすればいい。ちくしょう、どうすれば……、どうすれば『道』は開ける!
「答えろっ!!」
堪えきれず、耕太は大声で叫んだ。
その時だった。
しゅるるるるっ!
柔らかな布が擦れるような音が響いて、歪んだ空間の遥か彼方から耕太の目の前まで、金色のリボンがのびてきた。
「っ!」
目の前でひらひらと踊るように揺れるその紐を、耕太は反射的に掴んでいた。
ぐんっと体が引っ張られる感覚に驚く間もなく、耕太は慌てて美香の腰に手を回すと、ジーナへと振り返り必死に叫んだ。
「師匠っ!」
「わかっている!」
ジーナは王子を脇に抱えたまま、素早く耕太に走り寄った。耕太はリボンに引っ張られてずるずると地面を引きずられていたが、ジーナががしりと耕太の肩に手をかけた時にはすでに限界だった。
「ぅわあっ!」
金色のリボンがしゅるしゅると耕太の腕に巻きつき、さらに美香、王子、ジーナの腕にも絡まった。そして次の瞬間、その細さからは考えられない強度で四人の体をぐいっと引っ張り、四人は一つの塊のようになって勢いよく宙に浮いた。
リボンがすごいスピードで来た方向へと戻っていく。縮んでいくと言った方が正しいかもしれない。風が耳元でびゅんびゅんと鳴り、髪はかき乱れて、美香と耕太は絶叫した。
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