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子供のセカイ。107

[434]  アンヌ  2009-11-29投稿
そのまま金色のリボンに導かれ、四人はあっという間に数百もの領域を飛び越えた。
どのくらい飛んだだろう。体が風を切る感覚や、耳鳴りにさえいい加減慣れるかという頃、ようやくリボンは引く力を失い、四人はもみくちゃになった状態で領域をつなぐ透明の壁を抜け、固い地面に投げ出された。
「きゃっ!」
「おわっ!」
石畳の上に叩きつけられそうになった美香を、素早く体勢を整えたジーナが横抱きに抱き止め、難を逃れた。
「平気か、美香?」
「ええ……ありがとう。」
一方、王子はすたっと格好よく着地を決めた……はずだったのだが、その背中に耕太がもろにぶつかったため、前のめりに倒れて強かにあごを打った。
「痛ってぇ〜!てめぇ、何でそんなとこにいるんだよ!」
「……君、喧嘩売ってるの?」
不穏な空気になりつつある二人を横目に見ながら、美香は立ち上がって、辺りの風景を見渡した。ジーナが二人に近づいていく足音がし、直後、「やめ!」という声と共に二つ分の頭を殴る音が聞こえてきた。喧嘩両成敗だ。
「ここは……?」
美香は自分たちが立っている石畳の広場をぐるりと眺めた。どうやらここは街の中のようだった。丸い広場の外周をなぞるようにしていくつか露店が出ており、にぎやかな客引きの声、また店を覗いたり広場のベンチで戯れたりする人々がたくさんいる。広場の向こうには背の高い建物が立ち並び、ある家には洗濯物が干してあったり、屋根の上で猫が日向ぼっこしたりしていた。
“子供のセカイ”で、こんなに人がたくさんいるのを見るのは初めてだ。まるで“真セカイ”に帰ってきたような気分だった。そこはありふれた街で、ありふれた笑顔が溢れていた。
「ラディスパーク……!」
後ろから驚きに息を呑んだような声が聞こえて、美香はぱっと振り向いた。王子はぽかんと口を開け、よろよろと数歩進み出て、周りの景色を呆然と見ている。
王子は、信じられない、という口調で呟いた。
「ほんとに、着いた……。」
「だから言っただろ、子供が『道』を用意してくれるって。やっぱりあの金色のリボンは偶然のびてきたわけじゃないんだ。あれが用意された『道』だったんだ!」
興奮したように息巻いて言った耕太に対し、疑り深いジーナは不信感を露にした表情を隠そうともしなかった。

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