もしも明日が2-5
コンコン…
控え目なノックの音。
「開いてるわよー」
軽く言ってやるとカラカラとドアが開かれた。
「あら、火葉くん。
もう『お仕事』なの?」
若菜には誰が訪ねて来たのかはわかっていた。
「あ、ああ。」
「そう、獲物は?」
「こいつだよ。」
資料を見せると若菜は顔をしかめた。
「まるでカメレオンね。
厄介だわ。」
はぁ、と溜め息をついたあと若菜は今度は何やら思案顔になりぶつぶつ言い始めた。
若菜が何か案を考える間、火葉はぐるりと資料室を見回してみた。
本棚に詰め込まれた大量の資料。
応接室も兼ねている為置いてある家具はどれも上等なものばかりだった。
カサブランカの脇のサイドボードを見ると一枚の写真がフレームの中に収められているのに気が付いた。
「なぁ、これ…」
「…だとするならやはり…って何?
ああ、写真ね。去年の冬に撮ったの。」
いつもと同じにイタズラっぽく微笑む若菜とその後ろに膨れたような表情の早稲田。
他に、火葉の知らない人物が二人写っていた。
無邪気な笑顔で活発そうな少女と優しい顔つきをした穏やかそうな少年。
この二人にも、その内会えるのだろうか?
火葉は、写真から視線を外した。
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