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エイ編?

[253]  サン  2009-12-02投稿
友達と仲の良さそうに歩いてくる三人の姿があった。

彼女の方も、僕に気付いたようだ。
彼女が駆け寄ってくる。

「エイお兄ちゃん?」

その言葉に僕はまだ幼かった頃のことを思い出した。

コウに、いつもくっついて来ていた可愛い女の子。

いつから会わなくなったのだろう、思い出せない。
「いくちゃん?」

いくちゃんがにっこり笑う。白いきれいな歯をのぞかせている。

「久しぶりだね。」

いくちゃんは嬉しそうだ。
彼女の友達は、気を使って、用事があるからといって帰って行った。

今、ふたりきりだ。

なんとなく手持ち無沙汰で、僕は喫茶店へと誘った。
そこはお気に入りの店で、趣味のよい音楽と、アンティークな椅子とテーブルがある。

和んでいる空気のなかで、僕は気になっていることを聞いた。

「最近、大丈夫? 家にあまり帰ってこないってコウからきいたけど…」

「昨日帰ったよ。お兄ちゃんにも会ったよ。」
「お兄ちゃんからなにかきいてるの?」

「いや、べつに。ただ、コウがいくちゃんのことを、心配していたから…」
軽くうつむく彼女に、何と声をかけてあげれたらいいのか、分からない。

「僕さ、今日失恋したんだ。告白はしていないんだけどね…」

好きな相手を僕は言えなかった。何となく、コウに負けたようで悔しかったのだ。

「わたしも同じ。」
「お兄ちゃんには言えなかったよ。親友の彼氏から、恋愛の相談を受けるうちに、好きになってしまって…。それであきらめたの。」

「そっかぁ…。」

なんだか傷のなめ合いみたいになってしまった。

一つしか歳が違わないのに、幼く見えた。

(きっと淋しいのかな。僕と同じだ。)

日が暮れて遅くなってしまったので、家まで送っていくことにした。

帰り道、自然に触れた手が重なり合った。

家に行く前の角で足をとめた。

そっと彼女の肩を寄せた。やわらかな感触と、ジャスミンの香水の香りがする。

頬を片手でなぞりながら、唇を重ねた。

唇を離したあと、またキスをした。彼女の唇は甘く、しっとりと濡れそぼっていた。



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