携帯小説!(PC版)

部屋

[557]  となりのトトりん  2009-12-05投稿
そっと最期の鍵をかける

二度と来ることのない
思い出の部屋はガランと冷たい

何度となく笑った千の日も

幾度となく泣いた千の夜も

この部屋に残して鍵を閉める


窓から見た景色も

一緒に歩いた道も

街路樹の色と共にいなくなる

床のへこみも

ドアのたてつけも

今が一番愛しくて
変化に怯えて足がすくむ


知らない人が思い出の場所に入ることを考えただけでとても悲しく

嫌なこともたくさんあったはずなのに
もう誰にも入られたくない
いつでも戻れる保障が欲しいのに

いつか私の知らぬまに
次の誰かが住みはじめたら

あの部屋から見ていた
景色は
もう別の人のもの


私の思い出は
私の部屋の
私だけのもの


何度となく笑った千の日も

幾度となく泣いた千の夜も

この部屋に残して私は静かに鍵を閉める


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